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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2025年10月26日(日)に第620回月例会(中土佐町大野見伊勢川,下ル川大平・西ノ川)が13名の参加で行われました。

七子峠に集合
七子峠に集合
9:30に七子峠の駐車場に集合し,そこから全員で車が安全に駐車できる大野見青年の家に移動した。参加者は13名で県外から来られた方もいた。私は土佐植物研究会に入会して30年ほどになるが,牧野植物園から林業中心の森林技術センターに異動となり,さらに高齢の母が一人で暮らす実家の手伝いで,研究会に参加することが難しい状態にある。それでも実家のある大野見での研究会を企画した鴻上会長に担当を依頼されたので,断る理由もなく引き受けることとなった。
伊勢川で観察
伊勢川で観察

毎週日曜日に実家に帰るのだが,3回ほど下調べに山に入った。一カ所は大野見の地元で長年にわたって野生植物の保護に取り組んでいた青木さんが大切にしていた伊勢川の土手に決めていたが,そこだけでは1時間ほどで終わってしまう。牧野植物園在職中に青木さんに案内された他の場所をおぼろげな記憶を頼りに探し回ったが,ここだと思う場所は見つからなかった。ここ数年で急速に増えたニホンジカの食害と皆伐地の拡大で林床の植物が減少し林相が変化してしまったようだ。それでも林道を走り回ってなんとか二カ所ほど,皆さんに楽しんでもらえる場所を見つけ出し案内することにした。

サラシナショウマ
サラシナショウマ
ノダケ
ノダケ
大野見青年の家で予定を説明して,荒れた作業道が走行可能の数台の車に分乗して出発した。最初に伊勢川の集落の入り口にある土手に向かった。標高は約300m,車で3~4分の距離だが,近くに来ると草刈り機を持って作業している人が目にとまり,思わず頭の中で「あ,やばい!」と叫んでしまった。軽トラがなんとか行き交うことができる道の北向きの土手で上部に用水路があり,夏でも冷涼で適潤な環境が保たれている。
下ル川大平で観察
下ル川大平で観察

道沿いにノダケ,ハンカイソウ,シラヤマギク,サラシナショウマ,シモバシラなどがあって,面積は限られているが大野見の二次草原の植物が数多く見られる大切な場所だ。刈ったばかりの植物がそのままになっていて「刈られた植物を見ないかんなった」と言われながら,なんとか観察をしてもらった。樹木ではヤマウルシとヤマハゼが一緒に見られていい勉強になった。地元集落の草刈りの日と研究会の日が重なったのは残念だったが,この地元の方々の草刈りのおかげで在来草本がたくさんみられる土手が維持されている。

ウシタキソウにも見えるミズタマソウ
ウシタキソウにも見えるミズタマソウ
コセリバオウレン
コセリバオウレン
10:00を過ぎたころ,次の観察地の下ル川に向かった。下ル川は四万十川の支流が流れ,大野見の中でも湿潤な谷が多く,渓畔林の枝に蘚苔類が着生して垂れ下がり熱帯高地の雲霧林のような景観が見られる場所もある。はじめに下ル川大平集落で道路脇に車を止め,徒歩で下ル川川に向かって下り,小さな沈下橋を渡って対岸の土手に生育する植物を観察した。標高約350m北向き斜面でキバナアキギリ群生がみられ,一週間前に下見にきた時に黄色い花が目にとまり観察地に決めた場所だった。キバナアキギリの花は終わっていて残念だったが川沿いに小道があり気軽に植物観察ができていい場所だと皆さんに喜んでいただいた。
下ル川西ノ谷での観察1
下ル川西ノ谷での観察1
下ル川西ノ谷での観察2
下ル川西ノ谷での観察2

皆さん熱心に観察されていたので,すでに11:30を過ぎていた。一株だけガンセキランがあり,もしや自生かと思われたが,帰り際に挨拶した対岸の家のおじさんから「あれはわしが植えた」と言われて「あるわけないか」と納得した。私が子供の頃,大野見でも山野草ブームがあり,豊富にあったエビネ,クマガイソウ,スズムシソウなどが乱獲され,今では他の地域より少ない状態になっている。

下ル川西ノ谷での観察3(黒岩)
下ル川西ノ谷での観察3(黒岩)
少し満足顔になった皆さんを案内して今回のメインである最後の場所に向かった。昼ご飯をどこで食べようかと考えながら運転していたら昼食場所にと考えていた田の口の神社を過ぎて目的地に到着してしまった。下ル川川には渓流が流れる南東に向かって開析した3つの谷があり,その中の一つが今回の観察地である。入り口の標高は約400m,渓流に沿って作業道が奥地まで開通し,道を歩きながら安全に植物が観察できる。入り口から少し入った道路脇に車を止め,そこで短めの昼食をとってもらうことになった。植物に詳しい参加者の一人が前に来たことがある場所だと分かり,その方の案内でいろいろな植物を観察することができた。
下ル川西ノ谷,シダ類が多く,雲霧林のようなコケ類が垂れ下がる
下ル川西ノ谷,シダ類が多く,雲霧林のようなコケ類が垂れ下がる

湿潤な環境が良く保たれていて,切り土法面にはいたるところにイワタバコやコケシノブの仲間が群生している。シダ植物リストの担当の細川さんとシダを観察したが,大野見でよく見られるキジノオシダの仲間やチャセンシダの仲間が多く観察できた。渓畔林にはモミジの仲間やアブラチャンが多く見られ,フサザクラ,ツリバナ,ウラジロウツギなど冷涼な環境に生育する樹木も見られた。また,フユイチゴとミヤマフユイチゴが一緒の場所に生えているのが観察できた。皆さんとても熱心に15:00近くまで観察した。「また来たい。いい場所だ。」と言ってくれる人もいて下見の苦労が報われた。

アケボノソウ
アケボノソウ
ミヤマミズ
ミヤマミズ
研究会に長い間参加していないせいで,植物の顔は分かるのだが,名前が出てこないことがあり,不勉強を実感することが多くなった。これを機会に記憶を取り戻したいと思った。

勉強不足でつたない案内でしたが,参加者の皆さんありがとうございました。

〔黒岩宣仁〕