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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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TEL:090-7622-1257

2025年6月22日(日)に第616回月例会(高知市皿ヶ峰)が7名の参加で行われました。

今回の例会は,県内でも少ない草原植生がみられる高知市皿ヶ峰で行った。
皿ヶ峰はかつて採草利用されていたことと,数年に一度起こる火災によって草原が維持されてきたところである(比嘉 2025)。
このたび,昨年12月14日に高知市皿ヶ峰の南東斜面で1.7haを焼く山林火災が起きたことをうけ,燃えた箇所と燃えなかった箇所の植物相の記録と比較をするため,⽇本⾃然保護協会の「モニタリング1000里地調査マニュアル」に準じた調査を例会で行なった。

モニタリング1000里地調査は,地域の市民団体が主体となり実施する調査で,生物相や指標生物といった様々な項目について,全国約200箇所で統一された調査を行い,里地里山という複雑な生態系変化を全国レベルでとらえ,調査結果を各地の市民による保全活動に直結させることを目的としている。
調査資料の準備やグループ分けのため,事前申込制とし,当日の参加者は7名となった。
9時に集合し,調査ルートや調査方法を説明したあと,2グループに分かれて,それぞれ踏査ルートに出てくる植物と開花結実状態を記録していった。
踏査ルートの距離は燃えた箇所約300m,燃えていない箇所約310mであった。

火災は約4時間後に消防により消し止められたそうだが,半年経ち,夏に向かって植物たちが成長してきているため,一見どこが燃えたかわからないが,枯れた枝がちらほら残っていることでかろうじて区別できた。
この日は,スズサイコやオカトラノオが花盛りで,キキョウやキンバイザサの花もみられた。
ツリガネニンジンは,葉が線形に近くなるタイプの個体が多く見られ,まだ花序も上がっていなかったが目についた。
ツリガネニンジンは県内では葉の形態が多型で,高知県植物誌(2009)では,葉が長楕円形~線形に細くなるナガバシャジンとして区別しているが,皿が峰では,葉が線形に近くなるタイプの標本が採集されていないためか,ナガバシャジンの記録がなかった。

山頂付近で休憩をとりつつ,しばらく周辺を観察したのち,帰路につき,13時ごろ散会となった。
今回の調査では,燃えた個所では,53科106種の植物が確認された。
このうち,草原生植物は26種,半草原生植物は42種(重複省くと23)であった。
燃えなかった箇所では,57科128種の植物が確認され,草原生植物は25種,半草原生植物は45種(重複省くと26)であった。
なお,草原生植物と半草原生植物は後藤田ほか 2024を参考にした。

燃えた箇所と燃えなかった箇所での種組成の大きな違いはみられなかった。
ただ,燃えた個所ではヤマツツジの焼け枯れた株が目についた。
また燃えた個所のネザサの回復は著しく,低木とササでは火災による影響に違いが認められた。

これまで研究会で定期的に皿が峰の植物相調査をしておらず,比較するデータがなかったため,山林火災前後の変化を見るには,季節ごとの継続的な調査が必要である。

〔田邉由紀・坂本彰〕

引用文献

  1. 後藤田真衣・瀬戸美文・比嘉基紀・石川愼吾.2024.ネザサ型草地の管理放棄により減少する草原生植物の生態的特性.植生学会誌41:37-50
  2. 小林史朗.2009.ツリガネニンジン属.In:高知県・高知県牧野記念財団(編).高知県植物誌pp. 462-463.
  3. 比嘉基紀. 2025. 皿ヶ峰の草原.高知県植物誌ニュースレターFLORA of KOCHI No.53.