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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2024年11月30日(土)~12月1日(日)に第610回月例会・忘年会(宿毛市橋上町坂本奥藤林道,大月町弘見・頭集,四万十市不破星神社)が延べ9名の参加で行われました

2024年11月30日(土)
①奥藤林道にて
①奥藤林道にて
土佐市のつなーで第4駐車場に高知から参加の6人が集合。細川さんと鴻上の車に分乗して8時に出発。国道56号線を走り須崎東ICより自動車道に乗り,四万十町,黒潮町,四万十市を経由して中村宿毛道路の平田ICで自動車道を降り,国道56号から県道353号に入り橋上町から県道4号を松田川に沿って北上。
10時15分頃,橋上町下坂本のGS付近で酒井さん佐田さん中平さんと合流。4台の車でさらに北上して,下藤・奥藤林道入口から松田川の支流下藤川にそって北上し10時40分に道路工事の土捨て場広場に到着。
②マツザカシダ(奥藤)
②マツザカシダ(奥藤)
さっそく林道沿いに徒歩で観察を始めた。時折日差しはあるものの風もありこの時期らしい気候なのだが,かなり寒く感じる。林道から川を見下ろすと,日当たりのよくなったサザンカの花が満開であった。まず上流に向かって進む。宿毛湾からは15kmほど入った地点ではあるが,林はアラカシやツブラジイ,アオガシ,タイミンタチバナ,ミミズバイなどの常緑樹が主体で,下層にはウラジロ,コシダをはじめ西部には普通に見られるオオカグマが多い。さらに海岸に見られるホウロクイチゴやヤナギイチゴも見られる。この辺りもシカが多いようで,シカが食べないコバノイシカグマ,ナチシダ,マツカゼソウも目立つ。道沿いにケケンポナシの果実が落ちており,拾って肥厚した果柄を味あう。シロダモがちょうど花の時期で,雄花と雌花を比較しそれぞれを標本にした。林道の路肩にはきれいに斑の入ったマツザカシダが見られるほか,ハチジョウシダモドキ,シロヤマシダ,イノデモドキ,オオハナワラビ,コウヤコケシノブ,ミツデウラボシなどのシダ類も多い。大型の常緑葉をもったバリバリノキや赤い実をつけたタラヨウ,カンザブロウノキなどの葉の様々な個体変異を一つ一つ観察しながら2kmほど歩いた時点で昼時となり,仮設トイレのある駐車場まで引き返して昼食をとった。対岸のイロハモミジの紅葉が美しい。
13時に観察を開始。広場には花と実をつけたヒロハフウリンホオズキや実をつけたハダカホオズキ,花をつけているヒメクマツズラなどが見られる。下流側はどうか見てみたが,乾燥しているようなので引き返し,再び上流側を目指す。のり面に葉が黄色く色づいたズイナが多く見られ,中にはズイナとしては結構大きくなったものもある。葉の細いカンザブロウノキを見てナナミノキ?とも思ったが,冬芽が異なるうえ,佐田さんが家にあるナナミノキとは違うということで一件落着。リュウキュウマメガキやカゴノキ,カナメモチ,ミサオノキ,コバンモチ,リンボクなどの常緑樹を観察したり,特徴的なコカモメヅルの果実やサルナシ,カギカズラ,ウドカズラ,ハマニンドウなどのつる植物を観察したり,なかなか楽しい林道歩きであった。
15時45分頃に駐車場に戻り,中平さんとはここで別れた。

もともとの計画ではこの奥の奥藤国有林まで行く予定であったが,林道工事で通行止めがあるということで,今回は途中の林道歩きに変更したもの。何回も下見をしていただいた酒井さんと佐田さんに感謝するとともに,シダ類が豊富なこの奥の谷については次回の楽しみとしたい。
③ツメレンゲ(叶崎)
③ツメレンゲ(叶崎)
林道を出て,宿毛市の市街地を経て大月町に入り,国道321号線を南下し16時50分頃に土佐清水市の叶崎に到着。壁面に広がる今が花時のツメレンゲを観察し,17時に日没,ダルマ夕陽を眺めてから今夜の宿である竜串のホテルオレンジに17時30分過ぎに到着。
宿泊は7名と少なかったが,この値段でこの料理?というイセエビほか豪華な夕食に皆大満足。夜の更けるのも忘れて談笑した。
12月1日
④ホテルの前で記念撮影
④ホテルの前で記念撮影
冷え込んだ朝で,7時前にホテルの前の浜に出てみると海面から蒸気霧が立ち上がっている。7時に朝食後,ホテル前で記念撮影。8時15分頃出発し,叶崎を経て8時50分に大月町の道の駅。予約のお弁当を仕入れて9時頃に本日の最初の観察地である弘見の水田へ。
⑤弘見の放棄水田
⑤弘見の放棄水田
道端にイヌタデ,キンゴジカの実が見られ,田の中ではシロバナサクラタデの実,ミズネコノオの花があり,ヒレタゴボウ,ヒロハスズメノトウガラシ,クロホシクサ,ホシクサ,ミズキカシグサ,シソクサ,スズメハコベなど,今ではまれになってしまった環境の良い水田に生える植物が次々と現れる。
さらに奥に進むとのり面にタマムラサキがたくさん咲いており,ヒメノハギの花,フナバラソウの実など点在し,貴重な場所である。農道ぶちにはツワブキやヤクシソウの黄色い花,ノジギクの白い花などが目を引き,トキワススキ,ウバメガシ,クヌギ,カクレミノ,クロキなどが生育している。
10時過ぎに出発し,10時40分に再び道の駅。ここで魚や干物を買い込んだ。道の駅を出発して,11時15分頃に頭集の音無神社前に駐車。
⑥タマムラサキ(弘見)
⑥タマムラサキ(弘見)
⑦マツバラン(頭集)
⑦マツバラン(頭集)
⑧サカキカズラ(頭集)
⑧サカキカズラ(頭集)
⑨ノジギク(頭集)
⑨ノジギク(頭集)
鳥居奥のイスノキの洞に生えたマツバランは健在。神社に流れる小川中の岩に生えるサイゴクホングウシダは一度は消えかけていたが復活している。神社横に回り込むと垂れ下がったサカキカズラに独特な実がついている。オオムラサキシキブやスダジイ,ネズミモチの実,クロキ,ナギ,ホルトノキ,タブノキ,ハマビワなど暖地の海岸植物が見られる。さらに大洞山の風車が見える裏側の田畑とその周辺にはタマムラサキやノジギクと共に,一面ビロードキビが生えた場所や,オガルカヤ,メガルカヤ,オトコヨモギ,ヒメアブラススキ,イタチガヤ,ウシクサなどとともにヤマジノギクやサワヒヨドリ,ワレモコウの花,早くも咲いたスミレ,イヌコウジュ群落の紅葉なども見られた。
12時20分頃に音無神社前に戻り昼食。13時頃に出発し,宿毛を経由,中村に向かう。目的は番外編ではあるが,宇田さんがぜひ見たいという高知県でも巨木と思われる四万十市中村の星神社のホルトノキである。
地元の佐田さんに先導してもらい,14時15分頃に不破に到着。小高い丘にひときわ目立つ大木が立っている。早速根元に回り込み,宇田さんがひもで胸高周囲を測ろうとするが,南側が削げた斜面に立っているため難航したが何人かが協力して何とか周囲にひもを回した。
日本の巨樹巨木データベースでは,胸高周囲470cm,樹高18m(目測)となっている。県内で最大のホルトノキは大月町安満地の稲荷神社に単木での幹周480㎝,樹高15mというものがあるようなので,機会があれば是非とも見たいものである(仁淀川町に株立ち総幹周715㎝,主幹の幹周435㎝,樹高19mというものもある)。

〔鴻上泰〕