2024年9月21日(土)~22日(日)に第31回四国植物研究会高知県大会・第608回月例会(高知市土佐山工石山青少年の家・工石山)が延べ27名の参加で行われました。
9月21日(土)
11時に幹事が集合して会場となる集会室の準備。12時過ぎから順次各県からの参加者が到着してきたので,受付を開始した。当初は初めに入所式の予定であったが,宿泊者対象であるため入所式は会が終了してからに変更して,12時過ぎから食堂で世話人会を行った。世話人会では次の開催からは従来での形ではできないので,集会は牧野植物園でのセミナー等に併せて行い,エクスカーションは各県持ち回りでその年の月例会の1回を四国のエクスカーションとするとの案が提示され,来年は徳島県の木下先生が担当してくださることになった。
13時過ぎに総会が開始され,順次各県の活動状況の報告があった。
- 徳島県(木下さん)徳島植物研究会はなかなか活動できていない。植物誌研究会?に変更し、阿波学会に参加している。報告も阿波学会に行ったりしている。また観察会も共催で観察会を行ったりしている。
- 香川県(佐藤さん)香川植物の会は現在会員60人程度、香川にも小学生が入りそう。シダに興味をもっている。毎月第1日曜日に9時半に集合して観察場所へ行くという方法で例会を行っている。説明が終わったら解散で、各自自己責任で観察会に参加する。会員には昆虫や鳥が好きな人もいる。20台くらいの車を止められる場所を選ぶのは大変で、観察場所は駐車場優先となってしまうことが課題である。観察会は駐車場のまわりをみる会になっている。会報はA4、8ページくらいのものを次の日に書いている。1月に総会で開催場所などを決めている。
- 愛媛(松井さん)愛媛植物研究会は毎年1月に総会、2月は研究発表会を行う。12月は忘年会などもする。設立から70年くらい、最初は理科の先生などが多かった。現在でも会員の数は減っておらず、54名程度。リタイア世代など時間のある方が中心。小学生も入り、皆さんやる気にあふれており期待している。SNSで情報を出すと盗掘まではいかないが、人が集まり、ふみ跡などができてしまう。人が増えていくと管理ができるかが今後の課題となっている。レッドの改訂作業を進めている。高速代等は出すことができ、調査ができている。全体的に希少種の調査は進んでいるが、特にランなどの人気のあるものは情報が集まりやすい。逆にヤナギノイノコヅチなどの地味な植物の情報が少ない。このような差を今後はどのように埋めていくかも課題となっている。
- 高知県(鴻上)土佐植物研究会の会員数は118名で家族会員が14組、県外27名。1月は総会、担当と場所を決めている。状況で変更するようにしている。今年は、3月、4月、8月が天候で中止している。高知も車が問題となる。14,5台は集まるのでバスも検討してバス代を会から補助しながら開催もしている。自家用車では事故のリスクもあるため、できれば自家用車を使わない形を検討しているが、現実難しい。今年は11月、12月は宿泊で行う予定をしている。高知県の植物誌調査にも研究会として協力している。機関誌は2年毎に出版。2025年で50周年になるため、その事業も検討している。
〔大利卓海〕
総会終了後14時頃から各県からの話題提供の発表が行われた。
- 木下 覺氏(徳島県)『徳島県におけるオオハナワラビ亜属(シダ植物)の分布について』
公共工事で消滅する徳島県内にこの仲間の一大産地がある。同定が困難なオオハナワラビ亜属の種類を紹介。 - 大西憲太郎氏(愛媛県)『ノダケとミヤマノダケの住み分け』
愛媛県RDBでノダケとの区別が十分でないため現状不明とされているミヤマノダケの県内での分布状況を現地調査した結果を紹介。 - 倉本真太郎君(愛媛県)『僕の大好きな好きなシダ植物』
小学校6年生の真太郎君が,この半年間に出会った大好きなシダ植物を紹介。ドキドキシダ同定クイズ付き。 - 橋越清一氏(愛媛県)『愛媛県において新たに見つかった植物たち』
ナガボクサスゲ,ニセナンゴクヤマラッキョウ(仮称),ムカゴサイシン,キリシマギンリョウソウ,ヒナノボンボリ等について紹介。 - 坂本彰氏(高知県)『高知県に分布するハンショウヅル類について』
四国内で各県での扱いが異なるハンショウヅル類についての情報の共有を。 - 前田綾子氏(高知県)『高知県に分布するサダソウについて』
高知県内のサダソウ生育地の状況を紹介。
最後に大利卓海氏(高知県)がエクスカーションの工石山のコースと植物の紹介を行った。
16時に一応会を終了し,入所式(オリエンテーション)後,玄関先で記念撮影後,各室に入室し,17時20分に食堂で夕食。18時すぎに東別館に集合して交流会を行った。交流会では生ものは禁止だったので,乾物だけでは物足りないということで,細川さんがコンロを持ち込みおでんを振舞ってくれた。飲み物を大分用意していたが,各県からの持ち込みもあり,22時頃まで皆楽しく植物談義に明け暮れた。特に真太郎君は各県レッドデータブックを片手に各県の強者達と対等に話をしている様子は頼もしかった。22時30分頃には皆部屋に戻ったが各部屋では遅くまで話し声が聞こえていた。夜は結構雨が強く降っていて,翌日の天気が心配された。
9月22日(日)
〔鴻上泰〕
健脚コース(山をガシガシ登る?グループ)
健脚グループ(登山口~杖塚~北回り~頂上を目指す)と紹介されていたが、登山口出発が10時前、2時間後の12時には青少年の家で昼食の予定が組まれていた。脇目も降らずにガシガシ登らないと山頂往復は無理なため、頂上は断念して、植物を観察しながらゆっくり歩くことにした。登山口から歩道沿いに木本型のオオマルバノテンニンソウが群生していて、皆さん、茎の部分をじっくり観察していた。ハガクレツリフネ、モミジガサ、クサヤツデ(蕾)や真太郎くんのガイドでシダ植物を観察しながら杖塚へ。杖塚の看板からタカネハンショウヅルが垂れ下がり見事な花を咲かせていた。また、杖塚あたりはオオマルバノテンニンソウの花が満開状態であった。ここから北回りコースを歩く。道沿いにぼつぼつヒメコウモリソウが観られる。アサマリンドウは天候が良くないために花弁は固く閉じられていた。やがて歩道の両側に花を咲かせているヒメコウモリソウの群生が現れて、皆それぞれの被写体を見定めながら撮影されていた。登山道が少し明るくなり、咲き始めたシコクママコナがとても可愛い。11時頃になり、雨が少し降ってきたため、ヒノキの風倒根の前で記念撮影をして同じ道を引き返すことにした。復路では参加者の一人が「県の木遊歩道」の林内でタマゴタケを発見、その後にもあちこちで歓声が上がっていた。予定通り12時に下山。
大雨の予報に反して、幸運にも雨にはほぼ降られることなく、植物もゆっくり観察できて、予定のエクスカーションを終了できたのは本当にホッとしました。皆さん、お疲れさまでした。
〔細川公子〕
ゆっくりコース
ゆっくりグループでは,当初ふるさと林道工石線を歩こうかとも思ったが,あまり植物が面白くなさそうだったので,登山口から行けるところまで行って戻ることにした。9時30分過ぎに健脚組のあとを追って徳島の木下先生を中心にハガクレツリフネやツルニンジン,オオハナワラビ,オミナエシ,ハナタデなどの花を見ながら歩く。クサヤツデはまだ蕾,ムカゴイラクサには地味な花がつき,花が終わってガクが残ったヤマジオウ,雨に濡れて花が下を向いているコフウロ,最下羽片が大きく開いたナンゴクナライシダ,花が咲き始めたギョウジャアザミなど参加者がお互いにこれは何,あれは何,どこが違うなどとおしゃべりをしながらじっくりと見ながら歩いて行く。結局杖塚との中間地点で引き返し,ふるさと林道工石線を少し歩いてから,青少年の家方面へ戻った。
〔鴻上泰〕