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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2010年11月23日(日)第442回月例会が開催されました。

 昨夜の天気予報で心配していた雨も降らず、本山町の大原富枝文学館近くの領北中央病院駐車場に、8時半集5台の車に分乗し、今日の案内人である山下さんの家に向けて出発。9時15分、家の前で待っていてくれた山下さんが合流して、総勢18名です。ほどなく山道に入り、汗見川沿いの紅葉に見とれていると、体長50~60センチのイノシシが目の前に見えました。イノシシはわれわれの車に驚いて、山の繁みに逃げ込んでしまいました。舗装していない道に入ると車の底で、時々ガツン、ゴツンと石のあたる鈍い音がして、ひどい傷がつかないのかなと余計な(?)心配をしていました。 9時50分、目的地の白髪山南側、山下さんたちのいう八反奈路(八反の広さの平地という意味だそうです)への登山口に到着。そこには、山下さんたちが作った、横1メートル、奥行き50センチくらいの大きな蛇紋岩の一枚石を屋根にした祠があり、その前で全員の無事故を祈って出発。 シデやモミジの仲間、コシアブラなどの赤や黄に紅葉した落ち葉の上を、カサカサという心地よい音を聞きながら歩いて行くのは、なんとも気持ちのいいものです。樹齢800年ほどのブナの木について、山下さんの話を聞いていたとき、誰かが、種の殻と葉のあるヒトツボクロを見つけました。さすが植研メンバーです。

 この花を知らない私に、渡辺さんが図鑑の写真を見せてくれました。昨夜の雨で山道はすべりやすく、慎重に歩いていると、山下さんたちがゴヨウマツやホウノキの倒木で、木道を作ってくれていました。ホウノキといえば、朴葉味噌をすぐ思いおこし、そう言うと「この木は材質が固いので、こういう用途もある」とのことでした。 自然のままの国有林に入ると、ブナ、ヒノキ、シャクナゲ、ヒメシャラ、ミズメ、コハウチワカエデ、ヤマグルマ・・・などなど、植物に詳しくない私でも、調和のとれた木々がほんとに美しいと思いました。 いよいよ今日の目的地に到着です。
 ここでは、長期間にわたって、台風やその他の原因によりヒノキが倒木を繰り返し、それによってできたという樹齢800年にもなる「根上がりヒノキ」の大木が33本もあるのは壮観でした。ちなみに地元の山下さんは、「根下がりヒノキ」と呼んでいました。根と根の間は人が通れるほどの高さで、それぞれの根の形は、自然という造形作家のオブジェそのものでした。ここのカナクギノキは、高知県ではいうまでもなく、日本でもいちばん大きな木ではないか、とのことでした。 11時50分、ヒメシャラが点在する明るい場所で昼食。食事の後、山下さんが語り部となって自作の民話
「たつのおっちゃん(土佐弁の「おんちゃん」だったかも?)」を聴きました。休憩後、シャクナゲの群生の広がる山道を、花の咲くころは美しいだろうなと思いながら、下山。 途中、山下さんが、珍しいオオクボシダがヒノキの倒木に生えているのを教えてくれました。3センチほどの何ということもないシダでしたが、誰かが「(値段は)いくら位するの?」と言うと、山岡先生が「17万円はするだろう」と応えました。その金額に驚いて私を含めた何人かが、もう一度そのシダを見に行きましたが、やはり何でもないシダでした。シダ好きの人たちには叱られそうですが、私たちには猫に小判です。
 15時、無事下山を終えた後、汗見川上流の冬ノ瀬に紅葉を見に行きました。広場に宿泊のできるログハウスが2棟建っていて、泊って見る夜空の星がとても美しいとのこと。さらに少し上流の竜王橋を渡りましたが、この竜王谷はシダ類の宝庫だということでした。真っ盛りの紅葉と、音を立てて流れる汗見川の澄み切った水が、ほんとにきれいでした。山下さんに一日のお礼を言って別れ、16時30分、領北中央病院駐車場に帰着して解散しました。

(隅田玉子)