2012年8月12日(日)第463回月例会(笹ケ峰・・・大豊町立川)が開催されました.
9時,昔,殿様の籠が揺れたであろう土佐北街道を上り始める.手入れの行き届いた杉林を縫う小径の沿いには,クサアジサイやマツカゼソウ,フタリシズカ,ウワバミソウ,シモバシラ,ホウチャクソウ,ミヤマタニタデなどの山草が次々と現れる.緑色の小さな花を着けたアオフタバランには歓声があがり,カメラの列が付く.特徴である2枚葉は虫食いであったり,欠けたりでなかなか良い被写体はない.山の名のササは何であろうか.登り始めるとミヤコザサが現れ,やがてスズタケが,山頂付近になると再びミヤコザサが多いようである.樹木類に目を移すと,まずケクロモジやシロダモ,ヒサカキなどが目につき,次にコシアブラやイロハカエデ,アセビが現れる.いずれも杉の林に囲まれて高くない.ただ1本のサンショウのみは,すりこ木がいくつも作れそうに立派である.露出する結晶片岩で滑りやすい急な道をさらに上ると,ブナやアカガシの大木,コハクウンボクやミズナラ,アサガラなどが現れる.800mから1000mまでのわずかな標高差であるが,樹種の変化を楽しむことができる.また,このところの降雨の影響か,橙黄色の3本足のサンコタケや緑青色の結晶を見るかのようなロクショウグサレキンなど,少なからぬキノコ類が林床に顔を出している.
頂上近くで横道に逸れ,胸高直径80㎝程度,樹高10数mはあろうかというりっぱなブナ,ミヤマノキシノブやヒメノキノブを纏う大木をながめながら稜線に出ると,涼やかな花を揺らす1株のナツエビネの出迎え.その稜線を少し上ると笹ヶ峰山頂,1016mに至る.10時29分,少し早いが,楽しい会話に充ちた昼食となる.
11時,記念撮影後,西行5分,三角点に至る.「この目立たない三角点は三等か」,「四等だ」の声を後に,元来た道を引き返す.途中,緑の消えた林床が,シカの食害を思わせる.下りは早く,新たな観察はほとんどない.往路で宿題とした一群のシダは,会長によってウスバミヤマノコギリシダと知る.なるほど,洋質は少し柔らかく,羽片の切れ込みも深い.ここには,ミヤマノコギリシダ×キヨタキシダのダンドシダの記録があるとのこと.一目みたいものと,しばし斜面を上り下りするが,見当たらず,諦めて登山口へ.しかし,そのシダは簡単に諦めなかった高家氏らの香川組によって確認された.葉身の形はキヨタキシダのようで,葉色や根茎はミヤマノコギリシダのようであった.この場合はウスバミヤマノコギリシダ×キヨタキシダに起源するのであろうか.興味深い雑種シダを眺め,やはり簡単に諦めてはいけないと思う.
まだ,12時過ぎである.県境の笹ヶ峰隧道まで行くことに.そこには広くはないが,草地が開け,オトギリソウ,ナガサキオトギリ,コケオトギリといったオトギリソウ3種が観察できる.稲垣氏によるこれらの簡易識別法の講義,片や複葉の大型シダを前にミドリヒメワラビか,いや違うとの論議,月例会の楽しい,有意義なひと時である.
13時20分,立川御殿.折からの強い雨もあり,散会する.463回を数えた月例会でも最も早い散会ではなかろうか.しかし,遠く広島県や香川県からの参加者を迎え,何とか天候がもち,クサアジサイやアオフタバラン,ナツエビネ,ヒロハイヌワラビといった花やシダも観察できた.担当者の一人としては満足すべきであろう(松本満夫).