2012年10月14日(日)第465回月例会(西又山・・・安芸市・馬路村)が開催されました
早速準備をして9時15分頃から登り始める.まず伊尾木川に渡してある丸太の橋を渡らなければならないのだか,所々腐っていて一度に大人数では渡らないようにした.対岸に渡りヒメクロモジやウリノキ,ケヤキ,ウンゼンツツジ,シャクナゲなどの低木の下にオオマルバノテンニンソウやシラネセンキュウ,ヒトリシズカ,チャボホトトギスなどの草本が点在する岩場付近を過ぎて.スギとヒノキの植林地の急斜面を登る.この植林地では最近列状間伐がされて,林床に大量の枝が落ちておりカヤランが付いている枝もあった.
以前は尾根を直登する登山道であったが,現在はジグザグに緩やかで歩きやすい登山道がつけ直されている.間伐地帯を過ぎると林床にはヤマジオウやホウチャクソウ,ヤマジノホトトギスなどが見られるようになるが高茎の草本がほとんどなくなり,沢沿いにマツカゼソウが目立つようになる.そんな道を1時間程度登り,標高約970m付近で西又山の西尾根にとりつく.尾根の分岐には標識はなく,一見してはどちらに行っていいか分からないが,登りの方向の左手,暗い植林に進む.尾根の左手(北側)はスギ・ヒノキの植林で,右手(南側)はアカガシ,ツガ,ウラジロノキ,イタヤカエデ,タムシバなどの天然林である.1000m近くになるとブナが出現,クマシデやタンナサワフタギ,コハウチワカエデ,ハリギリなどが随伴し,1100m付近からヒメシャラの多い林になる.尾根に倒れたブナが現れ右手側斜面に自然林がでてくるが,植林を含めて林床にミヤマシキミなどの小群落以外ほとんど植物はない.さらに登ると,シラキが赤く紅葉し始めているのが見られた.1300m付近南西の尾根部が明るいブナ林になっても,見通しの良い公園のようになっており,地面を見ると所々に枯れたササの根が転がっている.以前この場所はササで覆われていたのが,シカの食害によってほとんどすべて食い尽くされてしまったのであろう。
5,6年前に登った時にすでにスズタケは枯れていたが,枯れながらも稈は残っていたように思うが,その姿も見えない.その上倒木が多く,空を見上げると林冠にギャップが大きく空いている所が多い.しかも林は高木と亜高木とわずかな低木が見られる程度で,階層構造を成しておらず,森林としての機能は失われつつある.林床ではスズタケがなくなったため,残存する樹木や林床に埋土していた種子から発芽した幼生がたくさん芽を出しているが,おそらくそれらは成木になる前にシカに食べられ,後継樹となる可能性は低い.したがってこの森林は,現存する樹木が寿命を迎えれば裸地化してしまう.今現在芽生えがあるうちに,少なくともギャップ部分をネットで囲うなどの手当てをすればまだ間に合う.何とか早急に手を打ちたいものである.
山頂の少し手前で倒れたブナにブナハリタケが大量についていた.その周辺にはナギナタコウジュとコバノイシカグマが見られた.このあたりでは黒いネットが木やササにかぶせられているところがあり,そのような場所ではササがかろうじて残っていた.山頂には12時少し前に第一陣が到着.四阿の北側にかなり大きなイチイ,南側にコシアブラの大木があった.難所や急登はなかったが,長い長い道のりだった.山頂の先の斜面では,樹木が枯れて見晴らしが良くなっており,剣山から石立山,三嶺を臨むことができた.
帰りには樹齢1400年とも言われるイチイの木を見にいったが,その隣の枯木の根元にはホコリタケの仲間が密生して大量に生えており,その場にいた皆が歓声をあげた.尾根のブナには立派なヤシャビシャクが着生しており,90個も果実を付けているものもあった.また,偶然ではあるがイタヤカエデにヤドリギが付いているのも見つけることができた.
3時45分には登山口に全員無事到着.帰る途中で道路脇の岩壁で,白やピンクのダイモンジソウとウメバチソウなどを観察し,そこで解散となった.秋の夕暮れは早く,球場前に着く頃には真っ暗になってしまっていた.(鴻上泰・前田綾子)