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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2012年10月14日(日)第465回月例会(西又山・・・安芸市・馬路村)が開催されました

 高知県側から西又山へのメインの登山口は,安芸市道古井別役線に続く林道東川千本谷線の別役登山口から高ノ河山を経るルートと魚梁瀬西川林道・西川125線奥から登るルートがあるが,いずれも林道の路盤が決壊して不通であるため,今回は別役公民館近くからの直登ルートを行くことにした.別役までの古井別役線の路面が荒れているので,安芸市内から時間がかかることを想定して集合時間を少し早めた.
7時10分頃集合場所の球場前に集まったのは,13人と少なかった.前号の案内に「難所あり,中級コース」と書いてあったためであろう.車4台に分乗して出発,伊尾木川の横を走る狭い道を通り,別役の登山口に着いたのは9時少し前だった.

 早速準備をして9時15分頃から登り始める.まず伊尾木川に渡してある丸太の橋を渡らなければならないのだか,所々腐っていて一度に大人数では渡らないようにした.対岸に渡りヒメクロモジやウリノキ,ケヤキ,ウンゼンツツジ,シャクナゲなどの低木の下にオオマルバノテンニンソウやシラネセンキュウ,ヒトリシズカ,チャボホトトギスなどの草本が点在する岩場付近を過ぎて.スギとヒノキの植林地の急斜面を登る.この植林地では最近列状間伐がされて,林床に大量の枝が落ちておりカヤランが付いている枝もあった.   
以前は尾根を直登する登山道であったが,現在はジグザグに緩やかで歩きやすい登山道がつけ直されている.間伐地帯を過ぎると林床にはヤマジオウやホウチャクソウ,ヤマジノホトトギスなどが見られるようになるが高茎の草本がほとんどなくなり,沢沿いにマツカゼソウが目立つようになる.そんな道を1時間程度登り,標高約970m付近で西又山の西尾根にとりつく.尾根の分岐には標識はなく,一見してはどちらに行っていいか分からないが,登りの方向の左手,暗い植林に進む.尾根の左手(北側)はスギ・ヒノキの植林で,右手(南側)はアカガシ,ツガ,ウラジロノキ,イタヤカエデ,タムシバなどの天然林である.1000m近くになるとブナが出現,クマシデやタンナサワフタギ,コハウチワカエデ,ハリギリなどが随伴し,1100m付近からヒメシャラの多い林になる.尾根に倒れたブナが現れ右手側斜面に自然林がでてくるが,植林を含めて林床にミヤマシキミなどの小群落以外ほとんど植物はない.さらに登ると,シラキが赤く紅葉し始めているのが見られた.1300m付近南西の尾根部が明るいブナ林になっても,見通しの良い公園のようになっており,地面を見ると所々に枯れたササの根が転がっている.以前この場所はササで覆われていたのが,シカの食害によってほとんどすべて食い尽くされてしまったのであろう。
5,6年前に登った時にすでにスズタケは枯れていたが,枯れながらも稈は残っていたように思うが,その姿も見えない.その上倒木が多く,空を見上げると林冠にギャップが大きく空いている所が多い.しかも林は高木と亜高木とわずかな低木が見られる程度で,階層構造を成しておらず,森林としての機能は失われつつある.林床ではスズタケがなくなったため,残存する樹木や林床に埋土していた種子から発芽した幼生がたくさん芽を出しているが,おそらくそれらは成木になる前にシカに食べられ,後継樹となる可能性は低い.したがってこの森林は,現存する樹木が寿命を迎えれば裸地化してしまう.今現在芽生えがあるうちに,少なくともギャップ部分をネットで囲うなどの手当てをすればまだ間に合う.何とか早急に手を打ちたいものである.
山頂の少し手前で倒れたブナにブナハリタケが大量についていた.その周辺にはナギナタコウジュとコバノイシカグマが見られた.このあたりでは黒いネットが木やササにかぶせられているところがあり,そのような場所ではササがかろうじて残っていた.山頂には12時少し前に第一陣が到着.四阿の北側にかなり大きなイチイ,南側にコシアブラの大木があった.難所や急登はなかったが,長い長い道のりだった.山頂の先の斜面では,樹木が枯れて見晴らしが良くなっており,剣山から石立山,三嶺を臨むことができた.
 帰りには樹齢1400年とも言われるイチイの木を見にいったが,その隣の枯木の根元にはホコリタケの仲間が密生して大量に生えており,その場にいた皆が歓声をあげた.尾根のブナには立派なヤシャビシャクが着生しており,90個も果実を付けているものもあった.また,偶然ではあるがイタヤカエデにヤドリギが付いているのも見つけることができた.
 3時45分には登山口に全員無事到着.帰る途中で道路脇の岩壁で,白やピンクのダイモンジソウとウメバチソウなどを観察し,そこで解散となった.秋の夕暮れは早く,球場前に着く頃には真っ暗になってしまっていた.(鴻上泰・前田綾子)

植物名:イチイ 撮影者:鴻上 泰
植物名:イチイ 撮影者:鴻上 泰
植物名:シラキの紅葉 撮影者:佐々木英男
植物名:シラキの紅葉 撮影者:佐々木英男
植物名:ナギナタコウジュ 撮影者:佐々木英男
植物名:ナギナタコウジュ 撮影者:佐々木英男
植物名:ホトトギス 撮影者:佐々木英男
植物名:ホトトギス 撮影者:佐々木英男
植物名:ウチワダイモンジソウ 撮影者:佐々木英男
植物名:ウチワダイモンジソウ 撮影者:佐々木英男
植物名:ウメバチソウ 撮影者:佐々木英男
植物名:ウメバチソウ 撮影者:佐々木英男
山下幸利(会員,林業家)が写真を見ての所見
撮影者:山岡和興
撮影者:山岡和興

山下幸利(会員,林業家)が写真を見ての所見ーーー広葉樹の枯死立木に虫が発生――その虫をアオゲラ、アカゲラ、コガラ、等々(キツツキ鳥類).が年々嘴でつついて穴をあけて虫を食べた有様.多分広葉樹だと思います.標高も900前後の広葉主体樹林のようで、シカも居る林のようですね。

山下幸利(会員,林業家)が写真を見ての所見
撮影者:山岡和興
撮影者:山岡和興

この木は30年位前このこぶ位置に何らかの外的条件で、生立木に傷が付くとか、強烈な雑菌が形成層に添着したとか、この木の生育上の妨げの作用が発生したので、その部分の形成層の異質部分を守る防衛本能を働かし、懸命に巻き包み殺そうと 樹液導管養分をこぶ状内に年々送りつづけた今でも(幹、こぶ腫瘍、両方を)太らしながら、生き続けている樹形だと思います(こぶの中にも導管が有りまして稼働し瘤も太らしています).このような、瘤木は天然林でわりと見られます.人口林内では無.( 針葉樹、広葉樹双方にみられます)

フジシダ 撮影:山岡(和)
フジシダ 撮影:山岡(和)
ヤシャビシャク 撮影;山岡(和)
ヤシャビシャク 撮影;山岡(和)
シラキ 撮影:山岡(和)
シラキ 撮影:山岡(和)
スギの植林 撮影:山岡(和)
スギの植林 撮影:山岡(和)
シロモジ 撮影:山岡(和)
シロモジ 撮影:山岡(和)
イチイ(右の大木) 撮影:山岡(和)
イチイ(右の大木) 撮影:山岡(和)
近郊の山 撮影:山岡(和)
近郊の山 撮影:山岡(和)
西又山山頂 撮影:山岡(和)
西又山山頂 撮影:山岡(和)