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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2015年6月6~7日に第25回四国植物研究会香川大会が行われました。

6月6日(土)
 高知からの参加者は午前10時に細川さんの車で南国を出発。斉藤さんは広島から直接高松に。前日の雨とうってかわって気持ちの良い晴天である。快調に高速道路を飛ばして、12時の受付開始前に栗林山荘に到着。栗林山荘はかなり古い宿舎で入り口が4階、階下に部屋がある。三々五々各県からの参加者が集まり、てんでに挨拶や情報交換が始まっている。すぐに宿舎の外に出て観察をしている人も居る。13時からの各県世話人会で会期中の段取り等打ち合わせ後、13時30分少し前に担当県香川植物の会の久米修氏の司会で開会。まず各県の活動状況の報告が行われた。続いて、次期開催県の愛媛県から、観察場所は小田深山、会場・宿泊:獅子越荘(定員40名程度)、予定期日:9月~10月中旬の告知があった。
 14時頃から17時まで研究発表会で以下の報告があった。
  1.木下覺氏(徳島県)「希少植物等のニホンジカによる食害の現状と課題」
  2.大西憲太郎氏(愛媛県)「愛媛県にアテツマンサクはあるのか?」
  3.白形毅史氏(愛媛県)「ここまで分かった愛媛県のイヌノヒゲの系譜」
  4.前田綾子氏(高知県)「四国新産キイレツチトリモチについて」
  5.佐藤明氏(香川県)「高松市峰山周辺の植物」
  6.久米修氏(香川県)「最近香川県で見つかった植物」
 18時から20時まで1階大広間で夕食・懇親会が行われ、その後、3階の香川県の和室で二次会が行われた。二次会では久米氏が5月29日から6月3日まで行っていた島根県隠岐の植物が紹介された。

6月7日(日)
 早朝から起き出す人もおり、散歩する人、山の上までランニングで往復してきた人(細川さん)などなど、外に出るとご近所の人が散歩していたりランニングしていたり、にぎやかな場所である。山荘の目の前にはノグルミが目立つ花穂を立てており、道沿いにはサイゴクベニシダなどが茂り、コメガヤも多い。この辺りはコナラ、アベマキの落葉樹林で、ウバメガシやカナメモチ、センダン、カクレミノ、クロガネモチ、マルバアオダモなども混生し、低木にイブキシモツケやウツギ、シロヤマブキ?なども見られた。
 7時から朝食、8時前に峰山公園第4駐車場へ移動。車の通りが多いと思ったら、なんと山の上は住宅地であった。第4駐車場は閉鎖されているので、隣にあるロータリー周辺の路肩にずらりと車を並べ、9時に弁当が配達されるまでの間、ロータリー横にある姫塚周辺をぶらぶらする。目ざとい人が開花中のスズサイコを発見。姫塚は保存のためロープが張ってあったので裏側に回ると、モチツツジに残花、ヤマツツジは花、クサスギカズラには花と実、林はアベマキ、クリでネズがたくさん混生、ヤマコウバシ、カナメモチ、イボタノキ、ナンテンも多い。ガンピやシャシャンポ、ヒサカキ、ネズミモチなども見られる。石積みで造られた姫塚は満開のマルバマンネングサでおおわれていた。
 9時に弁当が配布され、記念撮影後、香川の佐藤明氏を先導に車道を戻る。法面草地にはすでに白くなったマカラスムギの穂やコバンソウが目立ち、車道側にはジャケツイバラ、アキニレなどが多い。民家脇の歩道を下るとコマユミの花、フユザンショウの果実、テイカカズラの花、見上げるとナナミノキに花が咲いている。高知県では中部~西部の川に近い二次林にまれに見られる木なので、喉から手が出るほど撮り(採り)たかったのだが、まだ出発して間もなく後ろに多くの人の列が続いていたので我慢。この辺りでは普通に見られるものらしいので、次の機会にと思っていたら、結局機会を逃してしまった。タツナミソウはすでに花は終わっており、ヤマハッカも多い。カワラマツバの花は満開で、タカサゴソウにまだ終わりかけの花がついていた。タカサゴソウは高知県ではごく稀で、CRである。細川さんとなんとか写真に収める。9時45分頃切通峠から車道を横切り、歩道を浄願寺山方面に向かう。途中荒廃した果樹園あたりに、ナヨクサフジの花と、すでに花が終わり種も落ちたキビヒトリシズカが藪の中に見つかった。ヒトリシズカに比べるとはるかに大きい。エノキがあるが、コバノチョウセンエノキもあるというので葉の先が伸びているものを探したがよくわからない。オオバヤシャブシやナナミノキは多い。ヤブムラサキは高知にくらべ葉が大きい。ヒトツバハギも生えている。シダでは立派なサイゴクベニシダが良く目立つが、エンシュウベニシダやギフベニシダもあるというが、わからなかった。愛媛の兵頭氏が採集したヤワラスゲを見せてくれたが、ベンケイヤワラスゲであるらしい。中腹あたりにツルニンジンの多い所があり、オンツツジ、アオハダ、ヤマムグラに花が咲いていたが、この辺りのものは茎に開出毛のあるオヤマムグラらしい(高知県にはない)。シロヨメナは葉の基部がやや茎を抱き、葉の毛が柔らかいイナカギクの形だ。同じように見えても高知県のものとは微妙に違いがありなかなか難しい。林床に点々とイヌヨモギと思われる葉がある。浄願寺山山頂に近く、久米氏がイワカラマツ類似種といっていた一群がある。イワカラマツは分布が極めて限られた植物で、花もなかったので、これがそうかと思うのみ。
 10時45分頃浄願山山頂二等三角点(239.5m)着。すでにこの頃には幾つかのグループに分かれており、私たちのグループは10数名であった。尾根を南に、雨乞之経塚を経て東展望台、さらに南展望台へ。南展望台の草地には満開のカワラマツバ、ウツボグサ、よく見るとすでに花を閉じているスズサイコなどがあり、屋島はじめ眼下に開けた街並みを望める気持ちの良い場所である。こんな場所に人が住んでいたという井戸のようなものもあるのには驚く。日差しがきついので、木陰のある東展望台へ戻り、昼食とする。
 12時頃昼食を終え、浄願寺山に戻ると、そこでは久米氏はじめ10数人のグループが昼食を摂っていた。
 12時10分頃、山頂を後にして元へ戻り、野山への分岐の急坂を下った。道は真っ直ぐにつけられており、トラロープも張られている。鞍部を過ぎ、野山への坂を登る。野山(203m)山頂下にカワラマツバやヤマジノギクとともにフナバラソウが数本生えていたが、花は終わっていた。その足元になんとニワウメが膝くらいの高さの灌木林となっていて、なぜニワウメが…と疑問をもった。野山を越えると再び急坂を真っ直ぐに下り、切通峠に出る。峠から猫塚への坂を登ると、イワシデが出現し、この辺りにもイワヨモギとともにリュウノウギク、さらにシマカンギクも生えている。コツクバネウツギやガンピ、ナツハゼも多い。ウバメガシやネズも相変わらず多く見られる。13時10分頃猫塚へ到着。上に登ると、盗掘跡が痛々しい。マルバマンネングサの黄色い花が満開で、数株の果実になったハタザオも見られた。小さなため池と石垣の傍らを抜けて車道に出ると、姫塚はすぐであった。
 梅雨の最中、奇跡的に良い天候に恵まれ、気持ちの良い観察会であった。いろいろ準備して下さった久米修氏をはじめ香川植物の会の方々に感謝いたします。〔文・写真:鴻上〕
ノグルミ
ノグルミ
スズサイコ
スズサイコ
タカサゴソウ
タカサゴソウ
フナバラソウ
フナバラソウ