2015年7月12日に第498回月例会(津野町葉山村鶴松森)が行われました。
一度解散してから,帰途についた時,佐々木さんと下村さんがギボウシの花を見つけた.確認してみるとカンザシギボウシであった.道ばたに数株が花を着けていたので気が付いたのだが,林の中に目を転じて驚いた.林床がカンザシギボウシの花で覆われているのである.およそ40m×30mほどの林内におびただしい数のギボウシの花が咲いている.余りの数に植栽を疑うほどであった.
鶴松森は東西に長い尾根の山で,最高部は1100m,山頂部に花崗岩が薄く帯状に入り,中腹には石灰岩の層が見られる.尾根筋は4kmにわたり,風力発電の風車が20基並ぶ.葉山風力発電所は2004年(平成16年)3月に着工して,2006年(平成18年)3月に稼働しているので,着工からは11年経過している.風車は車道でつながり,周辺は風の里公園として展望所やトイレが設置され,車道沿い法面の緑化や植栽により様々な外来,帰化種が見られ,しばしば本来のものか迷うことしばしである.カンザシギボウシ群落のすぐ上部には風車が回っているので,もしやと思ったのである.昔からの登山道が尾根筋にあったはずなのに,今まで記録が無かったことも気になる.
フシグロ |
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全国的には兵庫県六甲山を東限に(六甲山上の自生地は逸出ともいわれているようだが),中国地方・四国・九州に分布し,徳島県,高知県,佐賀県,熊本県,大分県,宮崎県では絶滅危惧種である.愛媛県では小田深山に極稀という記録があるが,レッドデータブックには掲載されていない.生育地は渓流沿いが多いようだが,日本の野生植物(平凡社)では石灰岩地としているし,朝鮮半島では草原に生えているようなので,生育環境はもう少し多様なようである.そういえばウナズキギボウシも大体は川沿いの崖に生えることが多いが,石立山などでは樹上に着生している.しかし,今回のように林床に群生するというのは異例なような気がするのだが・・,少々頭を切り替えなければならない.
カンザシギボウシの特徴は,まず葉の色の黄味が強く,黄緑色に見えることと,葉の表面の艶が余りないこと.花が花茎の先に集まって咲くことが最大の特徴で,蕾の際には苞に包まれた蕾が簪に見える.特徴を捉えた良い命名だと思う.花茎に数本の翼があるのも特徴で,指で触るとよくわかる.(文・写真:鴻上泰)