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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2015年7月12日に第498回月例会(津野町葉山村鶴松森)が行われました。

 梅雨真只中の観察会,今回は葉山村の風の里公園へ行く事に,小雨の中 道の駅カワウソの里へ.11名が集合8時40分に5台の車で葉山へ,どんどんと標高を上げて途中フシグロの群生地を見る,車道沿いにはホタルブクロが切れ目なく白い小さな袋を沢山つけている.アキノタムラソウも咲き始めている,ここは石灰岩が露出している所は落石防止のネットの中に,沢山の種類の植物が見られ,しばらく散策する.イブキシモツケ,ヒキヨモギ,ミツバベンケイソウ,シマカンギク.開花の頃にはもう一度来たいと思った.コンクリート壁面に白い花を付けたバラが下って居た.同定して貰ったらテリハノイバラとの事,このバラは立ち上がらず横に這うとの事,納得しました.バイカウツギも教えてもらって花の頃にはさぞかし清楚な白い花を付けて居ただろう.よく見ると既に種を付けていた.小雨の中にも関わらず,参加者それぞれ散策を楽しんで居る様子に内心ホッ,雨も又楽し,植物の生き生きとした姿に皆の顔もほころんで見えた.お昼は風の里展望所の傍に車を止め 車中食となった.降ったり止んだりの天気であったが風車最奥の案内板には,鶴松森へ30分と書いてあり,頂上を目指すことに成った.頂上は,今は草に覆われて眺望は無い.近くにはハンカイソウも見られ,下山後林道の傍らにオカトラノオの群生を見て来る時には気付かなかったトモエソウを見て散会,帰途に就いた.今回は雨の中でも沢山の収穫が有って満足の観察会に成りました.会長さんには大いに助けて頂き無事役目を終える事ができ感謝です.参加者の皆さん,雨の中ご苦労様でした ご協力本当に感謝致します.(佐々木康子,下村公水)

 一度解散してから,帰途についた時,佐々木さんと下村さんがギボウシの花を見つけた.確認してみるとカンザシギボウシであった.道ばたに数株が花を着けていたので気が付いたのだが,林の中に目を転じて驚いた.林床がカンザシギボウシの花で覆われているのである.およそ40m×30mほどの林内におびただしい数のギボウシの花が咲いている.余りの数に植栽を疑うほどであった.
 鶴松森は東西に長い尾根の山で,最高部は1100m,山頂部に花崗岩が薄く帯状に入り,中腹には石灰岩の層が見られる.尾根筋は4kmにわたり,風力発電の風車が20基並ぶ.葉山風力発電所は2004年(平成16年)3月に着工して,2006年(平成18年)3月に稼働しているので,着工からは11年経過している.風車は車道でつながり,周辺は風の里公園として展望所やトイレが設置され,車道沿い法面の緑化や植栽により様々な外来,帰化種が見られ,しばしば本来のものか迷うことしばしである.カンザシギボウシ群落のすぐ上部には風車が回っているので,もしやと思ったのである.昔からの登山道が尾根筋にあったはずなのに,今まで記録が無かったことも気になる.
フシグロ
フシグロ
 カンザシギボウシは県内では古くから仁淀川町仁淀村に知られており,他には仁淀川町池川,いの町本川(2ヶ所),そして四万十町大正に現存する.仁淀村の自生地は川岸,大正も川沿いの道路ぶち,いの町本川も川沿いの道路ぶちと,川岸岩上にキシツツジなどと混生しているので,川沿いや渓流と縁の深い植物と思ってきた.(本川の1ヶ所と大正は人家近くで,植栽からの逸出の可能性がある.)しかし,鶴松森の自生地は尾根筋のカナクギノキ,ケヤマハンノキ,ウリハダカエデなどの林床である.私が驚いたのは個体数の多さとともに,この生育場所の違いであった.
 全国的には兵庫県六甲山を東限に(六甲山上の自生地は逸出ともいわれているようだが),中国地方・四国・九州に分布し,徳島県,高知県,佐賀県,熊本県,大分県,宮崎県では絶滅危惧種である.愛媛県では小田深山に極稀という記録があるが,レッドデータブックには掲載されていない.生育地は渓流沿いが多いようだが,日本の野生植物(平凡社)では石灰岩地としているし,朝鮮半島では草原に生えているようなので,生育環境はもう少し多様なようである.そういえばウナズキギボウシも大体は川沿いの崖に生えることが多いが,石立山などでは樹上に着生している.しかし,今回のように林床に群生するというのは異例なような気がするのだが・・,少々頭を切り替えなければならない.
カンザシギボウシの特徴は,まず葉の色の黄味が強く,黄緑色に見えることと,葉の表面の艶が余りないこと.花が花茎の先に集まって咲くことが最大の特徴で,蕾の際には苞に包まれた蕾が簪に見える.特徴を捉えた良い命名だと思う.花茎に数本の翼があるのも特徴で,指で触るとよくわかる.(文・写真:鴻上泰)
クルマバナ
クルマバナ
コバノフユイチゴ
コバノフユイチゴ
ナガサキオトギリ
ナガサキオトギリ
オカトラノオ
オカトラノオ
カンザシギボウシ
カンザシギボウシ
カンザシギボウシ群落
カンザシギボウシ群落