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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2016年12月10日(土)~11日(日)に第515回月例会(宿毛市橋上町奥奈路京法川流域,大月町柏島・樫ノ浦,大月町赤泊~才角月山神社~大浦・貝ノ川歯朶浦)が行われました。

12月10日(土)
 巨峰園のマイクロバスは7時に南国市役所で4人を乗せて出発,一宮東門で2人,東久万で1人,塚ノ原で4人,7時45分に朝倉で5人をピックアップして伊野ICから高速に乗り,8:10土佐PAでトイレ休憩。バスの中では日程説明,注意事項が細川さんから伝達され,信州から参加の藤田さんが,土佐PAで採集した実物で,アカオニタビラコとアオオニタビラコを解説し,次いで持参したヒュウガセンキュウとオオバセンキュウの標本を回しながら,違いを説明。長野県でオオバセンキュウとされてきたものが実は標高1500mから上部にはオオバセンキュウが生育するが,それ以下はヒュウガであったことなどを解説。この2種は根生葉に近い葉で見ると,葉裏の葉脈がオオバは細かく,ヒュウガは荒いことなどで区別できることを説明してくれた。
10時10分に宿毛市山奈町の運動公園でトイレ休憩後,10時20分に橋上町奥奈路から橋を渡り松田川の支流京法川へ入る。集落を抜ける道が狭いのでバスが入れるか心配したが,無事通過し,2kmほど入ったヒノキ植林地内の鶏舎跡付近で途中下車し,上流へ向かって歩くことにした。ほとんど植林でシカの食害が大きく林内は貧弱であるが,アラカシ,タイミンタチバナ,ヒサカキ,ネズミモチ,シロダモ,ヤブニッケイ,アオガシ,アセビ,リンボク,ヤブムラサキ,ヤマビワ,ヤブツバキ,シリブカガシ,サザンカ,フジツツジなどが生え,林床にはイズセンリョウが多く,白い実をつけ,ヤブコウジが赤い実をつけ,ツルコウジ,ニガクサ,コチヂミザサ,ハスノハカズラ,フユイチゴ,アキノタムラソウ,タチツボスミレ,キンミズヒキ,ノコンギク,コナスビ,ミソナオシ,サンショウソウ,キミズなどが次々に出てくる。所々でヒヨドリジョウゴやハダカホオヅキが朱色の実をつけ,ヤクシソウの黄色い花,1㍍にも伸びたオトギリソウの花がら,ヒメアブラススキ,チカラシバなどの花穂などが残っている。シダではオオカグマが多く,カツモウイノデ,マルバベニシダ,イノデ,オオイタチシダ,ヤマイタチシダ,ナガバノイタチシダ,イブキシダ,シシガシラ,コハシゴシダ,ミゾシダ,カタヒバなどが一通り生えている。クリハランやイワヤナギシダなども群落を成しているが,いずれも個体のサイズが特大であった。ミツデウラボシも多く見られたが,ここのミツデウラボシは文字通り典型的な三又になっているものが多い。コバノミツバツツジも点在するが,葉が厚く表面に艶があるので,常緑のようにも見える。林内の一角にヤダケらしきタケが群落を成しており,肩毛があるのでメダケとの雑種であるメンヤダケであることを藤田氏に教わった。本州紀伊半島以西に分布するイタチガヤは長野県の藤田氏には貴重品。ヤマカモジグサの花がらがよく見られ,護頴にガラス質の毛が多いものをエゾヤマカモジグサということを教わる。県内では標高の高いところに見られるが,中村市勝間川でも採集されているので,このあたりに出現しても不思議はないが,この場所ではそのような型はなかった。シロヤマシダ,イワガネソウ,イヌイワガネソウ,ヘラシダ,マツザカシダ,シシランなどもあり,キジョランにはアサギマダラの幼虫も見られた。湿った岩場にはヒメイワギボウシが結構たくさん生えており,果実がたくさんついていたので花時には是非見たいものである。カンアオイが点在していて,花が咲いているナンカイアオイらしきもの,蕾がついているサンヨウアオイらしきものとホシザキカンアオイではないかと思われるものとが見られたが花がないので確信できない。
12時まで歩いて,先行して待機していたバスの中で昼食を採った。河原に下りて昼食をとっている人もいたが,とにかく寒かったので車内で食べる人が多かった。
昼食後バスで数㌔走り,ホドウネの手前でヒメミヤマスミレとシハイスミレの混生を観察した。対岸の岸にはキシツツジの花が狂い咲きしていた。
20分ほど観察して,バスに乗り13時10分頃還住藪まで行ってUターン。奥で伐採しているらしく,材を積んだトラックが行き来している。
 10分ほど下流の,林道宝川線の分かれにある白皇神社付近で観察。林道に挟まれてイチイガシやウラジロガシ以外の境内林は残っていない。道沿いの斜面にキッコウハグマの果実がたくさんあり,花も少し残っており,コバノタツナミやケトダシバ,コゴメスゲなどとともに,川沿いには若枝や葉裏に短毛のあるサツマルリミノキがきれいな実をつけていた。しばらく観察したのちバスに乗車して2㌔ほど下ったあたりで下車して周囲を観察した。林内にタラヨウやカラスザンショウが目立ち,ツクバネガシやミサオノキ,サツマルリミノキが点在する。道路の法面にはイズハハコが点々と生え,ミヤマウズラがかたまって生えていたり,マツザカシダやイヌシダ,ヌリトラノオも見られる。ベニシダやマルバベニシダとともにエンシュウベニシダも結構生えている。クリハランなどの葉面にカビゴケが生えていた。カビゴケは一見するとそれこそカビのように見えるが,本州(千葉県以西)・四国・九州に分布するれっきとしたクサリゴケ科の苔類で,一生を樹木やシダ類などの葉の上で暮らす変わり者である。この辺りにはいろいろな葉に見られたが,実は環境省のRLではNT,なんとお隣愛媛県や山口県などでは絶滅危惧Ⅰ類の希少種。何よりの特徴はその匂いで,近くに寄っただけでもかび臭いのである。コケマニアの人はこの匂いだけでカビゴケの存在が解るとか。嫌われ者のカビに擬して自分を守る,なんとも愛らしい希少種である。カンアオイの仲間も点々と見られるが,すでに蕾をつけているのは葉の感じからはホシザキカンアオイに見える。コスミレの花やマルバノホロシの果実はよい被写体となっていた。他にモロコシソウや山陰型タチツボスミレなども確認できた。15時20分にバスに戻り,本日の観察は終了。宿毛市内の宿へ向かった。
 17時頃に宿毛市の秋沢ホテルに到着。18時30分から食事会場で研修会に入った。
まず,坂本彰氏が,「帰化植物ニューフェース」として,最近高知県内で確認された帰化植物を紹介。ツノアイアシ,ホウキアゼガヤ,ニセシマニシキソウ(仮称),ショウジョウソウモドキ,ミチタネツケバナ,カロライナツユクサ,アレチイボクサ,シナダレトラノハナヒゲが紹介された。料理を目の前にしてお預けは耐え難いので,乾杯で宴会をはじめ,途中でバスの中で標本を見せてもらった藤田氏からパワーポイントでヒュウガセンキュウとオオバセンキュウの違いの解説があり,次いで松本氏がJICAで滞在していたミャンマ-の農業をパワーポイントで紹介。夜の歓談はさらに続き,21時ころ一応お開きとなった。
12月11日(日)
 宿舎を8時に出発。本日も朝から良い天気である。8時20分に大月町でふれあいパーク前で弁当を受け取り,まず柏島へ向かった。9時に柏島着。目的は浜のソナレノギクであった。数年前の台風でほとんど消えてしまったのだが,回復を期待してゴロゴロの浜を探したが,結局1株もなかった。30分後に出発し,観音岩に立ち寄る。ノジギクとツワブキ,アゼトウナがきれいに咲きそろい,入口ののり面にソナレノギクが1株倒れながら咲いていたのを撮影した。ウバメガシ林の林床にはヤマカモジグサがたくさん生えており,所々にイヨカズラも見られる。トベラ,マサキ,アキグミなどに果実がたくさん着いている。思い思いに手前にノジギクの花を入れながら観音岩を撮影し,10時10分に出発。西泊の樫西海岸に立ち寄り,ここでも満開のノジギクとツメレンゲを観察する。植え込みに大きなコウテイヒマワリが咲いており,その傍らに植えてあるソテツの葉が何者かに食われて骨のようになっている。犯人はどうもソテツシジミではないかということで,探すとヤマトシジミと混じってソテツシジミが飛んでいる。なかなか写真を撮れなかったが,藤田氏が上手い具合に写真に収めた。2006年ころから沖縄や阪神地方でクロマダラソテツシジミが確認され,幼虫がソテツを食べる蝶として話題になっている輩である。
 樫西海岸を11時に出発し,西泊の狭い集落の道をバスの運転手が肝を冷やしながら無事通過し,11時40分に才角の月山神社に到着。道々オオムラサキシキブの見事な果実をつけた株を見かけたが,なかなか停車はできなかった。月山神社で,昼食をとり,周囲を観察。まず,林床を覆うオオイワヒトデの大群落に目を奪われる。林は立派なムクノキやタブノキ,スダジイの大木で,低木にハドノキやアオガシ,タイミンタチバナ,ヤブツバキ,カゴノキが目立つ。ハドノキは県内でもまず西南部にこないと見られない木で,この時期枝にツブツブの白い果実が着いている。クローズアップしてみると小さな緑色のそう果がゼリーの様な白いものに包まれている,というより上に乗っかっている。後で調べると,白いゼリーは花被が肉質化したもので,食べてもほとんど味はないそうである。口にしなかったのが残念。月山神社は月影の霊石をご神体とする神社で太子堂の裏手の急斜面の山の中腹に三日月形の立派な霊石が祭られている。霊石の手前に県内では稀なメジロホオヅキの花と実が見られ,危ない足元に気をつけながら撮影。太子堂には河田小龍の天井画が描かれているとの説明があるが,中は暗くて見えない。太子堂の周囲の板壁にはいくつもの穴が開いており,どうもムササビか何かが出入りしているようである。
 月山神社を12時45分に出発。途中オオムラサキシキブの果実が見事なところで数回停車し写真撮影。小才角ではバスの運転手さんお勧め,スルメイカの一日干しの店に立ち寄り,ほとんどの人がイカを購入した。サニーロードを土佐清水市へ向かって東進し,13時30分に貝ノ川漁港を過ぎて歯朶ノ浦の旧道を観察。ツクシキケマンやハマナタマメ,ツルソバ,ハマヒサカキ,ここにもツメレンゲが咲いており,壁面にはハマホラシノブやコウラボシが生え,オオイタビに果実が成っている。ツメレンゲが帯化して巨大な花序になっているものもあった。歯朶ノ浦を14時頃出発し,14時20分に三崎の細川さんの実家に立ち寄り,お兄さんが用意してくれていた無農薬のミカンとレモンをいただいた。庭に珍しいナツメガキが鈴なりに実っているのを撮影。15時20分にビオス大方に立ち寄り,帰途についた。バスでの月例会は遠足のようで楽しいものであった。〔文・写真 鴻上〕
ミツデウラボシ
ミツデウラボシ
サツマルリミノキ
サツマルリミノキ
マルバノホロシ
マルバノホロシ
ハドノキの果実
ハドノキの果実
月山神社のオオイワヒトデ群落
月山神社のオオイワヒトデ群落
月山神社にて記念撮影
月山神社にて記念撮影
樫西海岸のツメレンゲとノジギク
樫西海岸のツメレンゲとノジギク
ノジギクと観音岩
ノジギクと観音岩