2017年5月14日に第520回月例会(幡多郡四万十町十和村大道口大道・奥大道竜王の滝・奥大道自然観察教育林)が行われました.
三々五々黄幡神社の石段に戻り、めいめい腰かけて昼食をとった。神社の境内林はほとんど若いヒノキ植林であったが、林床にミヤマトベラの一群やヒメミヤマスミレがたくさん咲いており、マムシグサも点在する。このあたりのマムシグサは仏炎苞の筒部が細く色が濃く、中部や東部で見かける形と少し異なる。神社の本殿の屋根部分の紋章が「☆」形で、それが屋根の各部位上下4ヶ所に連続して刻印が打ってあるのだが何か意味があるのだろうか。神社の境内にはサカキはもちろんゴヨウマツ,ウバメガシ,ナギ,ナンテンなどが植栽されていた。
さらに北上し奥大道の番所谷を経て大滝(竜王の滝)に午後1時ころに到着。滝の入口の向かいには「絹巻の駄場」なる平家一族の住居跡の看板があった。滝への道沿いはアラカシやウラジロガシ,アオガシ,ケケンポナシなどの広葉樹林で,谷側林床にはリョウメンシダが生い茂り,アオテンナンショウの花や,チャボホトトギス,ウワバミソウ,サツマイナモリなどの湿った場所を好む植物が多い。イワボタンと思われる植物は,花後で葯の色がわからないのだが,西部に見られるキシュウネコノメとしておく。ちなみにイワボタンの葯の色は淡黄色で県中部の山地沿いに見られ,ヨゴレネコノメの葯の色は暗紫色,種子表面の突起は0.02~0.07㍉で中部~東部に多く,キシュウネコノメの葯は暗紫色で,種子表面の突起が0.1㍉以上あり西部に見られる(高知県植物誌2009)ということになっている。
龍王の滝で観察 |
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午後1時50分頃に滝を後にし,番所谷の分岐から複層林への道へ入る。分岐附近の田では竹内さんが田植えの準備をしていた。複層林への道は舗装されていたが,崩落があり,落石を片づけながら慎重に車を進めた。午後2時15分頃に複層林の入口に着き,早速谷へ降りる。ツガとアカマツとアカガシの林で,複層林はスギ,ヒノキの大木が林立している。解説によると文化8年(1811)に植えられたものを昭和8年(1933)に択伐してその下に新たにスギ,ヒノキを植栽したものだという。したがって樹齢200年のスギ,ヒノキの下に80年余の後継樹が育っていることになる。植林以外では谷筋にモミ,ウラジロガシ,ケヤキ,アオガシ,バリバリノキ,シロダモ,ヤブツバキ,ツルシキミなどが生えているが,草本類は少なくヒメミヤマスミレ,イナモリソウなどが見られたに過ぎない。遊歩道を途中で切り上げ,入口に戻り,フデリンドウの花などを観察して帰途についた。来るときに崩落していた場所は,竹内清治さんが「あそこはよくパンクするので」ということできれいに片づけてくださっていた。
さらにオプションで,十和の広瀬に向かい,ハナガガシを観察した。ハナガガシは日本固有種で九州(宮崎県・熊本県・鹿児島県)と四国(高知県・愛媛県)に分布するまれなコナラ属の樹木。愛媛県では愛南町の社叢1ヶ所,高知県では高知市朝倉の社叢に大木が2本(高知市保存樹木)と土佐市松尾の社叢に数十本(土佐市天然記念物)が知られている。広瀬の社叢にはイチイガシやイスノキとともに3本のハナガガシの大木が生えており,境内にはその実から発芽したたくさんのこばえが見られた。
すでに午後4時をまわっていたので,この神社境内で解散した。〔鴻上泰〕