2017年8月20日(日)に第523回月例会(A:愛媛県土小屋~筒上山、B:いの町本川寺川よさこい峠~名野川谷)が行われました。
手箱越から名野川谷コースを調査するにあたって、二つの課題を設定した。一つは手箱越の岩場に生育するイトイの生育状況と個体数を確認することと、もう一つは手箱越手前のキレンゲショウマの生育状況と個体数を確認することである。理由は、イトイについては生育が確認され過去に何点か標本も採集されているものの、個体数については確実な資料がないこと、キレンゲショウマについては昨年の生育状況からシカの食害が懸念されたためである。二つの課題を全員で4時間といった限られた時間内でクリアするのは困難であることから、一番目の課題については韋駄天の押岡さんにお願いし、その他の者がキレンゲショウマの生育地へ向かって11時5分に土小屋を出発した。
土小屋から丸滝小屋までは、県境コースでなく岩黒山の南面を通るコースを選択した。ここは愛媛県の範囲であり、観察は足を止めずに歩きながら見る程度で、所要時間は登山の場合と同じ50分であった。昼食もそこそこに12時20分に丸滝小屋を出発し、目的地へ急いだ。丸滝小屋を過ぎて少し行くと県境尾根に出る。その後は、尾根の北の崖に架けられた鉄製の桟道を歩く。高知県側であるので時間が許せば観察しながらゆっくり歩くのであるが時間がないうえに、心もとない桟道であるので数人が集まって観察することもできない。足元と前を注視し、横の崖に生える植物は横目でも見ながら足早に通り過ぎた。丸滝小屋から15分で尾根道との分岐、更に15分で下山道との分岐に到着。キレンゲショウマの生育地はさらに片道20分を要することから、健脚でない二人と付き添い1名を残し、5名がキレンゲショウマ生育地に向かうこととした。下山路との分岐から20分でキレンゲショウマの生育地に到着。途中で見た背が低く小葉が小さいカラマツソウ属の植物も気になったが、ゆっくり同定することもできなかった。
キレンゲショウマの生育地は、幅50m長さ80mほどの礫の多い北向きの斜面で、花をつけた花茎の数は約300と推定された。昨年8月11日の観察では、キレンゲショウマの集団の中に、モミジガサ、テバコモミジガサ、カニコウモリ、シコクブシ、オオバショウマ、オオバヨメナといった中・大型の草本類が多数繁茂し、キレンゲショウマは押され気味に感じた。ずいぶんと昔になるが土佐の植物誌に掲載されている写真では、斜面一面がキレンゲショウマであった。昨年の観察で、カニコウモリ、シコクブシといったシカの好まない植物が多く見られたことから、シカの食害によって群落の種構成に変化があっているのではないかと懸念したが、今年はキレンゲショウマも多く見られ、とりあえず安心した。石鎚山系でも筒上山あたりまでシカの生息が確認されていることから、今後植生への影響を注視していく必要がある。
キレンゲショウマの調査・観察と写真撮影は10分ほどで切り上げ、ちょうど合流した押岡さんも加わって下山道への分岐へ取って返す。下山道の分岐で待機していた3名は、予定どおり13時30分に先行して下山を開始した。キレンゲショウマ組は予定より15分遅れて13時45分に分岐を出発。登山道脇にはシロヤシオが多く、花の時期には違った光景が見られそうである。アオベンケイ、ヤシャビシャクも足元の確認の合間に上目遣いで眺め、先を急ぐ。途中で先行の3名に追いつき、全員そろって予定より15分遅れの15時15分に登山口へ到着した。
今回の月例会のコースを調査するには時間が不足して「登山」になってしまい、限られた成果しか得られなかった。例えば、出発の時刻を2時間早める、高低差の少ないコースにするとかの方法をとれば、もう少し多くの会員の方が高標高域の森林の植物を楽しめたのではないかと考える。本報告を今後の参考にしていただければ幸いである。〔文:坂本〕
(B班)
B班は、細川さんを中心とした12名が参加した。どちらかというと足に自信がなく、それでもいろいろな植物を見たいというメンバーで、土小屋へ行く途中のよさこい峠でバスを降りて道路に沿って下り、手箱山の登り口でA班と合流する計画だった。
よさこい峠で10時44分にバスを降りて岩黒山を前に見ながら下って行った。道路の左右には、シロモジ、ノリウツギ、リョウブなどの木が多く、ダイコンソウやナガサキオトギリの黄色い花、バライチゴの赤い実、ヒヨドリバナなどが目立つ。降りてすぐから、実のたくさんついたヤマブドウがあり、かなり下のほうまで実のある株が見られた。
歩きながら観察して下っていくとハガクレツリフネが咲いていた。ここで、花が小さくて葉の上から花柄が伸びている株がみられ、猪野さんが「以前、このあたりで花の小さなハガクレツリフネを探してといわれていた」と言い出して、皆がアイパッドで調べるなどしてエンシュウツリフネか等と検討したが、結論は出ていない。12時30分位に本日のミッションであるという「オヒョウ」の木をカーブのところの道の下に田口さんが見つけた。特徴的な葉の木は2株はあるようだったが、崖の下なので近づくことはできなかった。
12時50分から20分ほど、道路沿いの広いところで昼食をとり、再び観察を続けながら下って行った。大分下ったところで道の下に大きな岩があり、スダレギボウシの花が咲いていて、上方にはチャボツメレンゲの白い花もたくさん見られた。その後、14時50分にバスにピックアップされ、15時前に合流地点についた。〔文:高野〕
〔写真:押岡・坂本〕