menu

The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2018年7月15日(日)に第534回(つの町葉山村川の内・竹ノ谷)が行われました。

 集合場所の道の駅かわうその里には,8時30分頃から三々五々参加者が集まりだし,豪雨で高知自動車道の立川橋が流され,13日に対面通行で再開されたばかりだが,香川の高家さんも来ていた。予定通り9時に6台の車に分乗して道の駅を出発。国道197号線をつの町へ向けて走る。姫野々を過ぎ上町のかわうそ自然公園入口から林道床鍋川の内線を南進。2kmほど行った神社から西の谷へ入ると5分ほどで行き止まり。昔薬用に飼育していた川の内鹿牧場があった場所で,見学者用の東屋や鹿用の牧舎や柵が残っている。すぐ先が竜王の滝で,水量は多い。その横に恐ろしく急傾斜の石段があり,鳥居には海津見神社と書かれている。入口に津野町野文化財「竜王様の石段」の説明文があり,石段は333段で,明治42年ころに完成し,石段の下から165段目の石は特に大きく,これは松山繁松という力持ちが下から持ち上げて築いたと書かれている。この石段は高知一の急坂として知られているらしい。
 滝の入り口の橋からイロハモミジに絡むマタタビを観察。周囲はアラカシの二次林で,ノリウツギなどに花が咲き、林床にナガバジュズネノキやルリミノキ、ズイナが多く,岩壁にはイワタバコが着生している。湿気が高いのでナガバジュズネノキの葉面には葉上苔類が着生している。石段までの斜面にはキジノオシダやミツデウラボシ、サンショウソウ、ツボスミレなどが生えている。鳥居から見上げると、急斜面によくも築いたなと思わせるようなまっすぐに天へ延びる石段で、まるでオーバーハングしているように見える。石段の両脇にはサツキやシャクナゲが植栽されている。ズイナが多く、ケケンポナシやヤマモガシ、サカキ、リンボク、タラヨウ、ツルグミ、カナメモチなどが石段脇に生えている。石段をはずれて右側の谷へ入ると、アラカシに加えてシラカシが混生し、ヤマビワやコバンモチ、ハマクサギなどの下にルリミノキやイズセンリョウなどが生え、谷へ向かってクルマシダなどのシダ類が多くなる。 
 石段をさらに上るとナンカイアオイらしきものやヒメガンクビソウ、シラヤマギク、コウヤボウキなどが見られた。最後尾でやっと石段を上がりきると、平坦な道でトイレもあり、神社の社が見える。すでに皆さんは境内で何やら観察中で、近づくとコキンバイザサが咲いているという。最初はよく見えなかったが、よく見ると境内の一部にかなりの個体数が確認でき、その内の数個体に花が咲いている。時間は10時40分頃で、おそらく丁度咲き出したころではないかと思われた。写真を撮ろうと影になると花は徐々に閉じてしまうし、おそらく午後には閉じてしまうだろう。境内にはナンカイギボウシの花やオオハンゲの花も咲いていた。社殿うらの石段にはオオヒナノウスツボらしきものも数株生えていたが、花がない。帰り際に目のいい佐々木さんがヒナノシャクジョウが点々と生えているのを見つけた。
龍王様の石段
龍王様の石段
 この石段下りが怖い。段の奥行きが狭いのでよく足元を見ながらでないと踏み外しそう。踏み外したら最後、下まで転げ落ちるしかなさそうなので、周りを見る余裕がない。
下りたところで11時を過ぎていたので、林道を元へ戻り、かわうそ自然公園の芝生広場で昼食をとることにした。広場には大きなパラソルがあり、下の川から涼しい風が吹いてくる。横になって昼寝が気持ちよさそう。川からは子供たちの水遊びの声が聞こえてくる。
 13時前に出発し,梶足石原野から「森の巣箱」と書かれた案内を林道倉川床鍋線に入る。境の長いトンネルにはヤイロチョウが大きく描かれ,床鍋倉川夢トンネルと書かれていた。同じ旧葉山村内に在りながら隔絶されていた床鍋への道が開かれたことへの思いが伝わる様であった。床鍋の集落は結構開けた土地で,森の巣箱は小学校跡の木造の校舎を利用した施設であった。床鍋は須崎市上分から旧大野見村の下ル川へ抜ける途中の集落で,依包川下流の須崎市上分側の支流が朴ノ川である。床鍋という地名は土佐町と旧窪川町にもあり,なんとなくシダの産地であったような気がしたのだが,特に植物的な場所も見当たらなかったのですぐに引き返した。
 13時すぎに国道197号の旧道であった県道377号線へ入り,白石の竹の谷へ入り,未舗装の林道の入口に車を停め林道を歩いて観察することにした。周囲の山は植林だが,林道ぞいは結構繁っていてなんとなく良さそうな谷であった。ここもズイナが多く,岩壁にはイワタバコがたくさん着生している。モミジカラスウリの蔓にまだ緑色のきれいな果実がいくつもついていた。イズセンリョウの大株で葉がやたら長いタイプが気になる。コバンノキに実が着き,シオデの花,オトギリソウ,ムラサキニガナの花実,フタリシズカ,ヤブムラサキ,ギンレイカの実,タケニグサの花などが目についた。1kmほどで道が途切れ,対岸へは谷を渡らなければならなかったので引き返した。葉先が長く伸びるタイプのムラサキシキブがあったが,両面に腺点がなくトサムラサキではない。ハナミョウガの葉の間に,赤くなり始めたツチアケビの実が下がっている。大きな葉の灌木が目につき,見上げると白い花弁状のガク片と黄色い花がついているヒロハコンロンカであった。高知県では西部と東部でややまれに見られるもので,つの町葉山村では初見ではないかと思う。山側の1株とあわせて2株であった。
 谷を出て,白石の二ツ家の先,白石小学校の西側の石灰質の壁面に着いているヒメウラジロを観察して帰路に着き,14時40分にかわうその里で解散した。このところの猛暑で,本日もうだるような暑さの中,熱中症を心配したが皆無事でよかった。(鴻上泰)
龍王の滝
龍王の滝
コキンバイザサ
コキンバイザサ
シオデ
シオデ
ヒナノシャクジョウ
ヒナノシャクジョウ
ヒロハコンロンカ
ヒロハコンロンカ
ヒメウラジロ
ヒメウラジロ