2018年12月25日(土)~16日(日)に第539回月例会(大月町柏島・周防形・頭集~土佐清水市叶崎)が行われました。
天気は上々。7時に宇田さん,松本さん,鴻上がバスに乗車して巨峰園を出発。一宮で細川さんと高野恵子さんが乗車。細川さんは事前に用意した飲み物などを積み込む。北環状線で髙橋先生,横内で黒瀬さん,大石さん,佐々木康子さん,下村さん夫妻の5人が乗車し,朝倉駅で山岡さんと出口さん夫妻が乗車。伊野ICから高速に乗り,四万十町のゆういんぐ四万十でトイレ休憩。金上野から開通したばかりの片坂バイパスを通り,数分で黒潮町拳ノ川の佐賀温泉を通過。宿毛道路を経由して宿毛市内から321号線に入り,10時30分頃大月町の道の駅ふれあいパーク着。トイレ休憩と道の駅で明日まぐろの解体イベントが行われる情報を仕入れる。当初の予定では姫ノ井に向かい春遠と不動の滝で観察して宿へ向かうことにしていたが,明日の天候が怪しいことと,本日の天気が良いことから急遽明日の予定と入れ替え,晴れの時に海がより透明度が高くきれいな柏島に変更。
11時30分に柏島の海岸に到着し,浜で昼食を済ましてから周囲を観察。ごろごろの浜は歩きにくいが,オオハマグルマにはまだ花があり,アシズリノジギクもきれいに咲いていた。細川さんがオニツルボがあるというので,よく見ると石の間に青々と葉の茂ったオニツルボに枯れた花がらがたくさん確認できた。1mほどの刈り込まれたような灌木はオオバグミ(マルバグミ)で,ちょうど花が咲いていた。堤防の外側をはじめ島内にはごく普通に生えているが,県内では柏島と沖ノ島でしか見られない。堤防沿いにはアキグミにくらべて葉が厚ぼったく,幅が広く,葉の先がやや円頭のマルバアキグミも同時に見られ,果実が実っている。果実はアキグミに比べややまばらだが一回り大きく,食べると結構甘味がある。海岸にはシャリンバイも多く,ほとんどマルバの形で,とにかく実の着きが良い。堤防沿いにはハマビワやトベラ,マサキ,アコウなどが生えており,アカメガシワやテイカカズラなども葉が厚くなって別物に見えてしまう。ひとしきり海岸を観察して,堤防の外へ出ようとしたところ,どうもススキの様子がおかしいことに気が付いた。通常のススキに比べて葉が広く,艶があり,トキワススキではないかということになった。植物誌では香川県と愛媛県では比較的多くみられるが,高知県では大月町弘見で採集されたものがそうではないかということが記述されている。しかし葉の縁を触るとほとんどざらつかない。大きさもススキと大差ない。ということはひょっとしてハチジョウススキか。ススキとの間に交配種が存在するらしくススキと見分けがつかないものもあるらしい。標本を採り,宿題とする。
柏島中学校の校舎は現在黒潮実感センターになっており,校庭は駐車場へと改装中であった。ダイビングセンターの前を通り,柏島の小学校跡地へ向かう。ソナレアマチャヅルやオオイタビ,ダンチク,ハマビワなどを見ながら坂道を上がる。校庭はヘリポートになっており,校舎は防災倉庫などに利用されている。校庭の脇から海岸方面へ下りる道を行ってみることにした。事前に稲垣氏に昔この道の下の畑の縁にシオミイカリソウガがあったと聞いていたのだが,畑は跡形もなくメダケ?やダンチクに被われていて結局水源と思われる行き止まりまで行ったが,イカリソウらしきものは全くなかった。ツワブキ,オニヤブソテツ,ハマヒサカキ,ノジギク,ノシラン,モクタチバナなどが見られ,ハチジョウイチゴやモクタチバナも多かった。ハチジョウイチゴにはモミジイチゴとの雑種であるハマキイチゴというものがあり,大月町で記録されているが,ここのものにはトゲがなかったのでハチジョウでよいと思う。
小学校跡地まで戻り,灯台への道を行くことにした。同じようにこの道の傍らにもシオミイカリソウがあったと聞いていたのだが,こちらもメダケ?やダンチクが密生し,林床はフウトウカズラに被われて生えそうな場所がない。ただ,下見の際にはかなりの藪状態であったが,道の刈り取りが行われていて歩きやすく,周りも見やすくなっていた。林床にエダウチチジミザサやコバノタツナミ,タマシダ,ノシランなどが目立ち,こちらもハチジョウイチゴやモクタチバナが多い。ハダカホオズキに実がなっており,さらにメジロホオズキの大株に実がついていて皆がカメラを構える。マンリョウがとても大きく,中には背丈をこえるものもある。県内の沿海地にはこのようなマンリョウがあり,マンリョウに比べ葉が長く,先端がやや尾状,鋸歯が低くまばらで著しい波状にならないものがあり,マンリョウの品種オオミマンリョウ(オオバマンリョウ)と呼ばれている。ただしオオミといっても果実の大きさには違いはない。
灯台へは13時50分に到着。灯台の少し先に三角点があり,登山グループが掛けた「大黒山144.7m」の標識があった。三角点近くのタブノキの幹に釣鐘の様にぶら下がった奇妙な形のサルノコシカケ類を見かけたが何かわからない。灯台で記念撮影後,もと来た道を引き返し,14時30分に小学校跡地へ戻った。バスに乗車して県道を戻り,15時に竜ヶ浜の入口に到着。ここでバスを降り,キャンプ場への道を下った。道沿いにクワ科の実が生っており,葉が厚ぼったいがヤマグワであった。海岸沿いではこのような形になるようである。斜面にはすでに終わりかけであったがアシズリノジギクの群落がみられた。稲垣氏によるとこの群落は地元の子供たちが種をまいて造成したものだという。キャンプ場周辺の海岸にはハマボッス,ハマヒルガオ,タイトゴメ,ハマナデシコ,ボタンボウフウ,ツルナ,ハマゴウ,テリハノイバラ,イワタイゲキなどが生え,湿地にはシロバナサクラタデやヒトモトススキ,ハマオモトなどが見られた。ただ湿地は大波により運ばれた大量の発砲スチロールが積み重なりとても入れない状態であった。海岸の岩場にはハマカンゾウやオニヤブソテツ,アゼトウナ,アシズリノジギクが見られた。
本日の観察はここまでで,16時30分頃に今夜の宿であるベルリーフ大月に着いた。
夜は松本氏のミャンマーで見た植物と細川さんが参加者からあずかった特別例会の沖縄の写真の上映を行い,そのあとはカラオケで楽しんだ。
12月16日(日)
午後から雨予想だったので,なるべく早く出発したいということで,7時食事後7時40分に出発。ベルリーフのすぐ下のエコロジーキャンプ場入口に咲くヤマジノギクを観察し,さらにバスで移動して四国の道(樫ノ浦から浦尻の道)を観察。入口に尻貝遺跡の立て札が立っている。軽四が通るくらいの広い道を入るとすぐに四国の道の案内があり,林内を周遊できる歩道がついている。道沿いはツワブキとフユイチゴ,ナキリスゲ,キチジョウソウなどが生え,斜面にはウラジロ,コシダ,斜面上部にはタブノキ,ウバメガシ,ネズミモチ,シロダモ,ヤブツバキ,トベラ,ヒサカキ,タイミンタチバナなどのこのあたりの海岸によく見られる常緑樹林だが,特にクロキの多いのが目立つ。場所によってはオオハナワラビとシチトウハナワラビと思えるものが多い。ベニシダ,ナンカイイタチシダとニセヨゴレイタチシダと思われるものもある。一株だが,カンアオイ属植物に花が咲いており,ナンカイアオイ類似だが,いわゆるアシズリカンアオイ(テラミネカンアオイ)かもしれない。あとはオオムラサキシキブとハチジョウイチゴ,フウトウカズラ,ナンバンキブシが目立つ。四国の道千万滝休憩所への道へ入ると,林内は単調でシタキソウやヒメユズリハ,クチナシなどが点在する。
四国の道を出て,対岸に放棄水田があったので入って見たが,カサスゲと思われるスゲの群落で,イグサ,セリ,アカバナ,ジュズダマ,ヌマダイコンらとヒメサルダヒコが見られた。
10時すぎに出発し,頭集の音無神社でバスを降りて観察。手前の田のふちにホトケノザノの白花が群生していたので,そちらに向かう人と,奥の田んぼに行く人とに分かれた。奥の田んぼののり面はヤマジノギクやヤマラッキョウ,ワレモコウ,ツリガネニンジンなどの草花がたくさん見られる良い場所であった。神社の林内には,カカツガユが数株見られた。
10時30分頃に雨が降り出したので,観察はそこまでにしてバスに戻り,道の駅に向かった。道の駅ではマグロの解体イベントが行われており,そこでマグロほかの魚を入手。あらかじめ頼んでおいたお弁当を受けとり,エコロジーキャンプ場へ。11時40分にキャンプ場に到着し,炊事棟でお弁当に3種類の刺身を加えた昼食となった。エコロジーキャンプ場は海岸へ下りる梯子が壊れて降りられなくなっていた。
降り続く雨の中12時40分にキャンプ場を出発。時間があったので,321号線を土佐清水まわりで帰ることにした。途中叶﨑の黒潮展望台で道路のり面に群生するツメレンゲとアシズリノジギクを見て,13時30分に土佐清水の道の駅めじかの里へ立ち寄り,大岐中益野林道で大岐を経由して15時30分にゆういんぐ四万十着。高知市には16時30分に到着し,雨が降っているので参加者の都合の良い降車場所で降り,17時すぎに巨峰園に帰着して12月例会は無事に終了した。〔鴻上泰〕