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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

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2019年4月14日(日)に第543回月例会(佐川町加茂大平山鉱山跡)が行われました。

雨中での観察
雨中での観察
 雨にも関わらず,午前9時にいの町波川仁淀川橋西詰仁淀川右岸河川敷駐車場に17名が集合した。久々に長野県の藤田氏も参加されたが,各地で晴れ女晴れ男をつぶしてきたと豪語するだけあって,朝から結構な雨である。本日の日程の説明の後,7台の車に分乗して出発。
 9時30分に佐川町加茂の旧道ぞいに駐車,雨はさらに強まり全員雨着に着替えた。当初の予定では太平山への山道を上る予定であったが,茂みがあるので,鉱山道を行くことに変更した。
 農道ぞいにはウマノアシガタの黄色やムラサキケマンの花がよく目立ち,山裾にはクサイチゴやカキドオシの花が咲いている。セントウソウにはまだ花が残っている。コバンノキは赤みがかった小さな葉を開きつつ,多くの蕾が見られた。ヤマネコノメはすでに果実をつけており,オオバタネツケバナにも花が咲いている。立ち上がった実をつけたミチタネツケバナも点在する。山に目を転ずるとコバノガマズミの白い花がよく目立ち,コツクバネウツギはつぼみ,コバノハナイカダの咲き始めた蕾がとても多い。花数の多い雄花が目立つが,よく見ると1つずつ咲いている雌花も目立たないが結構多い。キブシはすでに花は終わり実になりかけている。
 先を行っているグループからこれは何?という声が上がる。駆けつけてみると,山の斜面から高さ3mほどの低木が垂れ下がるようにして生えており,葉のもとに柄のある独特な赤い花が咲いている。花の形態からスイカズラ属のウグイスカグラの類であることはわかったが,ウグイスカグラそのものは県内では確実なものは見つかっておらず,かといって子房等に腺毛も見当たらないのでミヤマウグイスカグラでもなさそう。だとするとヤマウグイスカグラにしか当たらないのだが,葉の形態に変異が多いとはいえ,あまりにも大きすぎる。葉に結構毛が多く特に裏側にはさわるとざらざらするくらいの毛が生えているので,無毛であるウグイスカグラではない。持ち帰って調べることにした。そこから少し先にも1株が確認され,さらにゴルフ練習場に面した斜面にも1株が確認された。
 谷沿いの少し暗い斜面にはケヤマウコギが何株かが生えており,近くで榎氏がトガリアミガサタケを数株見つけた。岩の斜面にはアオホラゴケが着生しており,谷沿いにシャガの花やムサシアブミの花,ナガバジャノヒゲの青い実などが見られた。
 10時45分にやっと鉱山のゲートを通過。ほんの1㎞ほどの道に1時間以上かかってしまった。相変わらず雨はひっきりなしに降り続く。石灰質の岩場にメヤブソテツや垂れ下がったコモチシダが目立ち始める。林内には石灰岩地特有のビワとナンテンがとても多い。途中はヒノキ植林で,その下にはアオキが多く実をつけている。県内のアオキはほとんどが2倍体のナンゴクアオキだそうで,葉の鋸歯の形が違うそうだが,外部形態では区別が難しい。マツザカシダやオオバノアマクサシダもよく目立つ。
大平山鉱山跡
大平山鉱山跡
 11時すぎにやっと目的地である太平山鉱山跡地に到着。鉱山内の大きな倉庫跡で雨宿りをしながら,早めの昼食をとる。
 12時にすぐ裏手の岩場に生えるモエジマシダを観察。なぜこの一角だけに生えるのかわからない。モエジマシダはヒ素を吸着する植物として知られ,銅山などにはよく見られるが,石灰鉱山でも同じようなことがあったのだろうか。岩場の下にはキツネアザミやツボミオオバコがたくさん咲いている。岩場の別の一角にはシランも咲いている。荒れた鉱山跡の縁にはアキグミが群生して咲いている。ヤマジノギクも狂い咲いている。そのまま鉱山奥へ歩き引き返す。建物の一角にダンチクらしきものが生えている。
 12時30分,採石場をすぎて上の鉱山へ向かって歩く。雨はますますひどくなる。谷を過ぎると岩場に終わりかけだがヤマブキの花が目立つ。切り立つ山手にはキジョランのツルがたくさん垂れ下がって見える。コクサギも多く,目立たないが花が咲いている。岩壁の下部や,道沿いにヒメヒゴタイの葉が群生している。秋には見事な大群落が出現するらしい。放置されている鉱山の山際はほとんどアキグミの大群落で,その上をクズやノイバラ,センニンソウやボタンヅルなどのツル植物が何重にも覆っていて,石灰の露頭には近づけない。林縁にはイタドリの群生。ちょうど採り頃で,見たら採らずにはいられない。結構な坂道でハアハア言いながらも,イタドリを見たとたん突進する馬力は土佐人ならでは。抱えきれないほど採っても採ってもまだ採る。水気を多く含んだイタドリはまるで水タンクを持って歩くようで重たいが,それでもまだ採る。採るときのポンという音と感触は何物にもかえがたい。
 13時過ぎに一番奥で上段の採掘場に到着。ここが今後最終処分場になるところだという。跡地一面はススキやチガヤに覆われている。水たまりができており,オタマジャクシが泳いでいる。水際にはイグサの仲間が生えており,縦筋がはっきりしているのでホソイと思われる。引き返す途中に赤い出始めの五角形の葉をつけたつる植物があり,コウモリカズラ?と思われたが,葉柄が盾状ではないのでツヅラフジらしい(高知県にはコウモリカズラは確認されていない)。ツヅラフジの葉は化けるので紛らわしい。
 13時40分頃採石場から下の山道を下る。途中典型的なものだというオニノゲシの花がたくさん咲いていた。下界で我々が見るオニノゲシとはかなり形態が違い,いかにもオニの名がふさわしい。藤田氏によると,普段に我々が見るほとんどがノゲシとの雑種アイノゲシで,純粋なノゲシそのものは少ないらしい。植物誌(2009)によると,痩果に横紋がないものがオニノゲシで,あるものがノゲシだが,連続するために区別できないので,横紋のないものをオニノゲシとしたと書かれている。山道には大型のムサシアブミの花やユキモチソウなどが竹林のしたなどに咲いており,調整池にはショウブが生え,アリドオシには赤い実がたくさん着いていた。人家近くの畑にはハルジオンが咲き,祠には遅咲きのボタン桜が満開であった。
 14時30分に集合場所の仁淀川橋西詰河川敷駐車場で解散した。雨は最後まで降り続き,降りやみは全くなかったが充実した月例会であった。〔文 鴻上泰〕
トガリアミガサタケ
トガリアミガサタケ
ヤマウグイスカグラ?
ヤマウグイスカグラ?
モエジマシダ
モエジマシダ
オニノゲシ
オニノゲシ