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The Botanical Society of Tosa

土佐植物研究会

<お問い合わせ先>
TEL:090-7622-1257

2020年11月8日(日)に第562回月例会(室戸市室戸岬・乱礁歩道~最御崎寺)が25名の参加で行われました。

 9時10分頃にはすでに多くの参加者が球場前の駐車場に集合していた。9時15分着の列車で2名が合流し,合計25名の参加があった。挨拶と本日の日程の説明を簡単にすまして,9時40分にめいめいの車に分乗して出発。途中お弁当を買うために道の駅に立ち寄る人もいたが,10時50分頃には室戸岬の北端の駐車場に再び集合した。途中吉良川のキラメッセあたりから段丘面のウバメガシのなら枯れが目につく。駐車場前の斜面でも黄葉した葉が落ち始めているアオギリとともに,なら枯れのウバメガシがいくつか認められた。
 駐車場を行き過ぎた人を待って,11時に観察を開始した。駐車場から海岸の乱礁歩道に入り,まずはかつてグンバイヒルガオが生育していた浜に行ってみた。周囲はダンチクが繁殖して,花穂を出していた。浜でテリハノイバラは元気に這いまわっていたが,グンバイヒルガオは見えなかった。ハマゴウは花が少し残っていたが,多くは実をつけていた。岩の間にヒトモトススキの大きな株が群落をつくっていた。至るところの岩にアゼトウナが鮮やかな黄色い花を咲かせていて,なかなか絵になる。海岸林の中に入ると,ナワシログミの花がよい香りを放っていた。もともとなかったツルソバが花と実をつけていた。これもそのうち除去できなくなりそうな勢いである。ウバメガシの幹をみるとカシノナガキクイムシが穿孔した穴が結構開いていて,段丘面だけではなく海岸林のウバメガシにもカシナガが入っていることが確認できた。今のところ枯れている木はなさそうであるが,今後どうなるか心配である。木陰のハダカホオズキに鮮やかな実が実り,アコウの枝に果嚢がたくさんついていた。アコウの枝先にはハマナタマメの実がぶら下がっている。イタビカズラの葉にオオキンカメムシが数匹寄り集まっていた。林床に黄色い花が一輪,クマノギクであった。歩道はウバメガシ林から海岸に向かう。岩上のシオギクはもう少しで花を開くところであった。ヒトモトススキの群落の中に一株,枯れたシマエンジュの実が実っていた。かつてはこのあたりの林縁には数株見られたものだが,グンバイヒルガオ同様,台風による波をかぶって枯れてしまった。ここから歩道は海岸の岩礁へ向かうが,ちょうど昼の時間になったので,めいめい岩の上に陣取って昼食をとることにした。曇り空で潮風が少し冷たい位だ。潮騒の合間にイソヒヨドリの鳴き声が聞こえる。岩陰にはオニヤブソテツが揺れ,ハマエンドウの花が咲いている。遠く水平線には貨物船の船影が見え隠れする。開放的で穏やかな心地よい昼食であった。
咲き始めのシオギク
咲き始めのシオギク
 30分ほど休んで,ここから一度国道へ戻る。観光協会の駐車場脇に良く目立つシルバーリーフのキク科の植物があり,あとで調べるとモクビャッコウであった。中岡慎太郎像の前から再度灌頂ヶ浜への歩道へ入る。途中わき道を入りアコウ大木の根と枝張りを写真に収め,室戸岬先端の灌頂ヶ浜を過ぎると,至る所にハマナデシコの花が咲いており,何枚も写真に収める。足元にはネコノシタが這い,所々に花が咲いている。目洗いの池では水面が見えないくらいに一面に水草が繁殖している。どうもミズキンバイのようであるが,もともとはなかったので誰かが放り込んだものと思われる。月見ヶ浜ではシオギクはまだ蕾が固く,砂利の中にルリハコベのこばえが確認できた。樹林の縁にキンギンナスビが見事に実っている。燈台への道へ入るための歩道を国道へ向かう途中,樹林の中で,見事なキジョランの実が目に飛び込んできた。上を見上げると,パパイアのような大きなキジョランの実が鈴なりに実っている。触ると中に綿がつまったようなふわふわした感触だ。今の時期は花も咲いている。アコウ林の中を抜けると,所々にタイキンギクが咲きはじめの花をつけていた。
 13時30分頃に国道わきの駐車場でトイレ休憩後,灯台への歩道を登りはじめた。道標には灯台まで徒歩20分とある。短い坂を上ると忠霊塔の広場で,その前に弘法大師一夜建立の岩屋がある。その入り口のアコウにもキジョランが絡んで大きな実をつけていた。クワズイモの大株が林立するへんろ道を上がり捻岩を過ぎる。この辺りは暖温帯下部の典型的なタブノキーホルトノキ林だが,タブノキの特有な白い幹が目立つ。林床は単調でコバノカナワラビ,イシカグマやウトウカズラが覆い,林冠から垂れ下がる様々なツル植物が熱帯のジャングルを思わせる。このツルを下部の木肌で種類を見分けるのはなかなか難しい。林床に目を凝らしながらへんろ道を登る。下部はコンクリで段がつけてあり,上部は昔ながらの石畳だが,傾斜は結構きつい。途中,休憩用の東屋を過ぎ,石畳にかかるころあたりからタブノキに代わってスダジイ林に移行し,林床に白い小さな実をつけたモロコシソウやコショウノキが見られた。
 14時すぎに最御崎寺に到着し,山門を入ってすぐ右のヤッコソウを確認する。3本のスダジイの内2本はなら枯れ状態で,樹冠を見ると半分は枯死している。しかし根はまだ生きているようで,ヤッコソウが発生している。特に裏側の1本のスダジイにはかなり多くの発生が見られた。ほとんどのヤッコソウはまだ鱗片葉を展開していない咲き始めの状態で,乳白色の肌が艶々であった。裏の林内にもヤッコソウが発生しているので,中平氏ほか目の良い人たちでヤッコソウの発生状況を慎重に調べた。結果,林内8本のスダジイに発生が認められ,上の3本と合わせて合計11本のスダジイに発生していることを確認したが,上の3本以外はいずれも発生数は少数であった。しかし,林内のスダジイの大半にカシナガの侵入が認められ,一部枯死しているものもあるため今後の成り行きが心配である。
 ヤッコソウを確認後,へんろ道をもどり,林内の歩道をたどり15時50分に室戸スカイラインを下った。ツルグミに花が咲き香りが漂っていた。ミソナオシにはたくさんの実がついている。タイキンギクは咲き始めで美しい。センニンソウやクサギにまだ花が咲いている。サカキカズラの特有な実やカンコノキの小さな実,シマサルナシの実も実っていた。路傍にはノコンギクとオオユウガギクの花が咲いていた。植栽と思われるイチイやキダチアロエの蕾を見ながら,スカイラインの下部ではガガイモなども観察できた。
 15時40分に駐車場に全員揃い,終わりのあいさつと次回の月例会の件を伝達して解散した。〔鴻上泰〕
アコウ
アコウ
ハマナデシコ
ハマナデシコ
キジョラン
キジョラン
へんろ道を行く
へんろ道を行く
モロコシソウ
モロコシソウ
ヤッコソウ
ヤッコソウ
タイキンギク
タイキンギク
シマサルナシ
シマサルナシ