2020年12月6日(日)~7日(月)に第563回月例会(中土佐町双名島,中土佐町上ノ加江山内新道山林道)が19名の参加で行われました。
大野から双名島まで約500mを歩く。天気はよく,昼近くなりやや暖かくなってきた。崖下に見える海水は青く澄んでいる。ツワブキやノジギク,アゼトウナは花盛り,ハマヒサカキに実がすずなりに着き,トベラの実や赤くはじけたアオキもよく目立つ。大野の浜にはサーファーが数人,寒空にもかかわらず波間に浮かんでいる。双名島直近の駐車場には車が数台停まっていて,私たちのほかに若者や子供連れの観光客の人たちが数組来ており,防波堤で釣りをしている人たちもいる。擁壁からはホウロクイチゴが垂れ下がり,実がなり葉が黄色くなりかけたハマセンダやビワの花が見られる。擁壁の大きなマス目の中にノジギクが懸崖のように垂れ下がって咲いている。
双名島には『暴風雨の度に大きな被害を受けていた久礼浦のために,鬼ヶ島の鬼が大岩2個を突き刺して運んできたが,力尽きて「おおの!」といって海中に沈んでしまった。そこで地名を大野といい,島には穴が開いている。』という伝説があるそうである。
二つの島は陸からと島と島との間が広い防波堤で接続されている。北島には正面に石段があり,祠が祭られていて,その上に続く石段が崩れていたのでそこまでしか行けなかった。トベラ,ネズミモチ,タイミンタチバナ,イスノキ,ヤブニッケイ,モチノキ,ヒメユズリハ,クロマツ,ネズミモチ,ナワシログミ,シャリンバイなどの下に,クチナシ,ツワブキ,オニヤブソテツ,ヒトツバ,タマシダ,オオイタチシダなどが生えている。北島を南側に回り込むと,岩の割れ目という割れ目にセメントが流し込んで固めてあり,落石が多いことがうかがえた。南島の急な石段を上がると上に灯台があり,途中の祠には妙に色っぽい弁天様が祀られていた。林床にタマシダが多く,マツバランも見られた。昼も過ぎていたので,南島と北島の間の防波堤の上で思い思いに昼食をとった。
昼食後,駐車場から県道久礼須崎線を大野岬方面へ歩いた。グランドの傍らにマルバルコウの花が群生しており,ホトケノザにも花が咲いていた。ヒノキ植林地の中にオオハナワラビが多数生育しており,林内にはミミズバイ,カクレミノなどの常緑の低木がまばらに生え,かつて栽培していたのであろうクロチクの群落も見られた。シマサルナシの実が落ちていたが,見上げてもどこにあるのかが分からない。ホウロクイチゴの一群や実のなった背の高いマンリョウ(オオミマンリョウ?)などが見られた。林の中を奥まで行くと断がいで行き止まりなので引き返し,県道をさらに青木崎方面へ200mほど行くと落石防止用の洞門がありそこから引き返した。洞門付近にはサネカズラやサルトリイバラの実やノジギク,タイキンギク,コバノタツナミ,ヤクシソウ,ウスベニニガナなどの花などが咲いていた。洞門から引き返し,グランドと大野の駐車場との間の畑や田んぼと水路の辺りを観察すると,シロバナタンポポ,ヒキオコシ,イヌタデなどに花があった。
オワセベニシダ |
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黒潮本陣には30分ほどで到着し,チェックインのあと,部屋割りをしてそれぞれがコテージに移動した。黒潮本陣からは久礼湾が一望でき,眼下に先ほど観察した双名島の全体を望むことができる。食事までにはまだ時間があったので,付近を散策したり,部屋でくつろいだり,入浴したりとそれぞれの時間を過ごした。コテージの間の道を上に行くと小高い山の上に展望台が設けられていたが,あまり行く人もいないのか展望台の前の樹木が邪魔をしてせっかくの景観がさえぎられていたのは残念。久礼はいまではカツオで有名だが,昔はブリの日本三大漁場の一つで鰤の浦とも呼ばれていたということが,展望台にパネルで紹介されており,昭和9年撮影の写真パネルに大敷網でブリの大群が水揚げされ,浜がブリで埋まっている様子が描かれていた。今は昔のことである。
食事は言うに及ばす実に見事な料理で,特にメインのカツオの塩たたきは高知に住んでいてもなかなか味わえない新鮮さで感動ものであった。
12月7日(月)
天候は晴れて気持ちの良い朝であった。コテージ脇の刈り取られた草むらに一筋の穂が出ており,藤田氏がワセオバナかもしれないと写真を撮り,採集した。県内では外来植物調査で1カ所採集されているだけである(後に藤田さんからヨシススキかもしれないとのメールあり)。
豪華な朝食を摂ったあと,直下の道の駅なかとさで,予約していたお弁当を受け取り,9時20分に上ノ加江を目指して出発した。途中タイキンギクの群生を観察したりしながら,県道25号線を南下。15分ほどで上ノ加江の十字路に到着し,右折してすぐに再度右折して上ノ加江川を遡らなければならないところ,私の全くの勘違いからそのまま県道を直進して約5㎞先の矢井賀の海岸まで出てしまった。細川さんが引き返して入るべき谷を確認してくれたので,矢井賀の海岸で30分ほど付近を観察してから引き返した。車が多い時に道を間違えると,引き返す場所を見つけるのが大変である。矢井賀の海岸では,タイキンギクやノジギクがきれいに咲いており,またコウラボシを確認して無駄ではなかったのだが,担当としては道を間違えたことで気が気ではなかった。
10時50分にやっと新道山林道入り口付近に車を分散駐車して,観察を開始した。新道山林道は火打ヶ森の南方尾根続きの四道峠の東側の斜面につけられた国有林道で,楠木(くちき)集落の始点からかなり奥まで続いている。ほぼスギ・ヒノキの人工林で,川沿いにアラカシ林が少し残っている。オオバヌスビトハギ,フユイチゴの実やイズセンリョウの白い実ヤブコウジ,ツルコウジの赤い実が目につく。ヨシノアザミやノコンギクにまだ花があり,コバノガマズミやルリミノキにも実がついている。林縁には結構ズイナが多い。シダ的な環境で,林道のり面にはミツデウラボシやマルバベニシダ,ナガバノイタチシダ,クルマシダ,ミゾシダ,コウヤコケシノブなどが普通で,海岸から離れているがタマシダも見られる。谷に少し入るとイワヒトデやカツモウイノデ,ノコギリシダ,オオカナワラビ,ヘラシダなどもたくさん見られる。エンシュウベニシダやミヤマノコギリシダ,ヌカイタチシダモドキも所々に生育し,壁面にツクシノキシノブやノキシノブも見られる。カゴノキやバリバリノキ,シロダモ,コバンモチなども普通で,カンザブロウノキやアカガシ,ケケンポナシ,ハマクサギ,カナメモチ,サンゴジュなども点在する。少し湿ったところにはハイチゴザサが群生し,ハダカホオズキの実が色づいていた。ハイチゴザサは長野県では絶滅してしまったものだそうで,藤田さんが丁寧に採集して標本にしていた。
林道は,始点から2㎞ほど入った作業小屋から奥はゲートがあり,皆はそこから引き返して,13時30分頃に車に戻り昼食。14時に林道を後にして帰路についた。途中久礼の大正町市場に立ち寄ったが,月曜日は残念ながら休みであった。久礼の八幡宮前で記念撮影をして解散した。6日,7日と私の下見不足で道のトラブルが相次いだが,何とか無事に済んで何よりであった。細川さんの尽力でGOTOトラベルを利用して格安で宿泊できたことに感謝いたします。