2021年5月23日(日)に第568回月例会(高知市土佐山工石山)が16名の参加で行われました.
まず妙体岩の横を通り山頂を目指すコースを進んだ。登り始めて間もなく、巨大な妙体岩に突き当たった。垂直にそそり立つ大岩はなかなかのものであった。周辺にはハイノキが多く、下見の時(8日前)にはどちらを向いても白一色という見事な開花であったが、本日は残念ながらもう花は散っていた。しかし、新たにカイナンサラサドウダンの花が咲いていたし、少し標高の高いところには、まだ花の咲いているハイノキも見られたし、オンツツジなどは満開状態だった。ホンシャクナゲの多い林の中で、アカガシやヒノキの趣のある老木にも眼を見張らされ、ヒメシャラやタブノキ、ヤマグルマなどの巨木も点々とあった。また無毛型カスミザクラかも??と期待されるサクラも2本見かけたが、単なる遅咲きのヤマザクラなのかどうか、葉の裏の白さ加減などを成葉でもう少し確かめる必要がありそうだと思った。11時半頃に山頂に着き、高知市街方面の絶景を眺めながら昼食をとった。山頂付近にはベニドウダンやシロドウダンが咲き始めていた。ナンキンナナカマドも点々とあり、よく見ると小さな蕾がついていた。花はとっくに終わっていたがアケボノツツジの幼葉には独特の風情があり美しかった。大きなアカガシとブナが並んで聳え立ち花を咲かせている一角もあった。
昼食後は、北の頂方面へ行き、山上を一周した。北の頂からは、好天に恵まれて、石鎚をはじめ、四国山地北方の主だった山々が眺められ雄大な山並みに思わず目を見張った。途中、美しいホンシャクナゲの残花も楽しめたし、オンツツジの花は見頃で大変見応えがあった。シコクバイカオウレンの小規模な群生地も何カ所かあり、種子をつけた姿が可愛いらしかった。また、ヤマグルマの花が落ちていたが、よくみるとそのヤマグルマは地面に横たわって生育しているヒノキの巨木から生えていた。ヤマグルマはヒノキと余程相性がいいらしい。林床にはコツクバネウツギの花が点々と咲いていた。ギンリョウソウやホウチャクソウの群生地もあった。再び元の山頂に戻り、そこから、シャクナゲ道を下り、さいの河原を目指した。シャクナゲ道のホンシャクナゲは、一週間前には林の中の随所に一面に咲き誇っていて圧巻だったのに、今は殆どすべて散ってしまっていた。しかし、天然の芸術品に指定したいようなヒノキやアカガシの古木に魅せられ、多種類の樹種に構成された林の中は、それだけでもう幸せな気分にさせてくれた。途中、一カ所展望のいいところに出ると、断崖にウラジロノキがあり、白い花を咲かせていたので写真にとった。タンナサワフタギの花も蕾が膨らみかけていた。やがてさいの河原に着き、少し休憩をとった。ツクバネソウの花などがあった。さいの河原からは、山腹の南斜面の林の中の横道を西の方向に進んだ。途中にヒメコウモリソウが本当に蝙蝠が羽を広げたような形の葉をつけ群生していたり、タチネコノメソウの花も咲いていた。道の下のやぶの中に一際豪華に花を咲かせているヤブデマリもあった。林内はしっとりとコケに被われている部分もあり工石山の中では、比較的シダの種類の多いエリアかなと思った。やがて道は、妙体岩直登ルートに合流した。そこから一気に下り、駐車している場所に戻った。そして3時頃現地解散した。
工石山は、誰もがよく訪れる山ではあったが、参加者の中には、「妙体岩ルートや山上での一周ルートは初めてで、良かったです」と言われた方もいて、今回のルートもそれなりによかったかなと、担当者としてはほっとした。全員元気に無事に完歩できたこともよかった。暖温帯から冷温帯への移行地帯の森林植生が見られる貴重な存在の工石山は、昭和42年に全国で初めて自然休養林に指定されたとなっているが、ゆっくり観察してみて、改めてこの山の魅力に納得した観察会になったと思います。そして何よりもお天気に感謝感謝の一日でした。〔宇田英一〕